2007年4月17日(火)「しんぶん赤旗」

国会の視点

参院の抑制機能発揮

「ゼロから」審議必要

改憲手続き法案


 「参議院におきましては、ゼロから議論を始めるのではなく、衆議院での審議を踏まえて、まさに良識の府として足らざるところを集中的に審議されると思う」

保岡発言に騒然

 参院での改憲手続き法案審議の最初となった十六日の本会議。民主党の簗瀬進議員の質問に対し、自民党の法案提出者、保岡興治衆院議員がこう答弁すると、議場は騒然となりました。

 憲法は、国権の最高機関である国会を衆院と参院の二院制とし、それぞれが独立して意思決定をおこなうとしています。衆院で可決された法案を再度審議することで抑制機能を発揮することが期待されているのです。参院が衆院の決定に影響されることはなく、衆院で可決した法案を参院が否決したことも幾度となくあります。

 保岡氏の発言は、憲法で定められた参院の機能を否定し、衆院の審議の補足をおこなえば足りるとする暴論にほかなりません。だからこそ、日本共産党の市田忠義書記局長は「参院の存在を事実上否定するもの」と批判。憲法のイロハをわきまえない異常なものと糾弾したのです。

 そもそも九条改憲と地続きの改憲手続き法案は、極めて不十分な審議によって衆院で強行されました。最低投票率の規定がない問題や有料広告が事実上野放しである問題、改憲原案を提案する憲法審査会の設置など、法案の根幹にかかわるテーマでさえ、審議はわずかなまま与党が打ち切りました。

 それだけに、参院では、まさに「ゼロから」の、徹底かつ慎重な審議が不可欠です。にもかかわらず飛び出した今回の発言は、衆院と同様、参院でも何が何でも強行しようという推進派の思惑が露骨に現れたものです。

 さらに異常なのは、保岡氏のような人物が、改憲手続き法案推進の中心に座っていることです。

 保岡氏には、二〇〇四年十一月、自民党の憲法調査会長としてみずから、九条改憲、集団的自衛権行使容認の改憲草案大綱をまとめたものの、大綱に「参院議員の閣僚就任の禁止」を盛り込み、参院自民党などの猛反発で白紙撤回に追い込まれた過去があります。同氏は、九条改憲、参院否定の“確信犯”といえます。

 保岡氏は、十六日の参院本会議で、手続き法案成立を「国民主権を確立することにほかならない」などとのべましたが、参院の役割を否定する人物に、国民主権をうんぬんする資格はありません。

問題点浮き彫り

 与党は、NHK世論調査では国民の8%しか改憲手続き法案の今国会での成立を求めていないにもかかわらず、郵政民営化法案(約百二十時間)の半分にも満たない審議時間で衆院通過を強行しました。安倍首相が今国会の施政方針演説で、政府提出でない改憲手続き法案について、「成立を強く期待する」と公式に表明するなど、三権分立に反し、国会審議に介入したためです。これほど国民主権とかけ離れたことはなく、保岡氏の立場は、法案の問題点を逆に浮き彫りにしています。

 今回の事態は、改憲手続き法案が、その内容の点でも、審議のやり方の点でも、国民の願いとかけ離れたものであり、国民世論と結んだ参院での徹底審議で廃案にするしかないことを改めて鮮明にしました。(小泉大介)



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