2007年4月7日(土)「しんぶん赤旗」

主張

タミフル

対策の見直しと被害救済を


 インフルエンザ治療薬「タミフル」の副作用の全体像を、厚生労働省が薬事・食品衛生審議会の安全対策調査会に報告しました。

 被害者団体や日本共産党が公表を求めていました。

十代に限る根拠なし

 報告によると、服用後に転落や飛び降りにつながりかねない「異常な行動」を起こしていたのは、販売開始の二〇〇一年二月から今年三月二十日までに百二十八人にのぼります。このうち、厚生労働省が投与の原則禁止を打ち出していた「十代」は五十七人です。十歳未満の四十三人と二十歳以上の二十八人をあわせると全体の55%を占めます。

 十代に限ってタミフルの使用を制限するという厚生労働省の対策には、何の根拠もないことが浮き彫りになりました。

 「異常な行動」や突然死を含め、タミフルとの関連が報告されている死亡例は、中外製薬からの報告事例五十五人をはじめ六十一人にものぼります。また、「異常な行動」を含む精神障害(幻覚など)・神経障害(けいれん、意識低下など)の事例は三百四十一人と報告されています。これらの被害も十代に限っておこっているわけではなく、むしろ十代未満がもっとも多いのです。

 厚生労働省が、三月二十日、十代の患者について「合併症、既往症等からハイリスク患者と判断される場合を除いては、原則としてタミフルの使用を差し控えること」との対応を出したのは、服用後の「異常な行動」が相次いで出ているという実態を重視したからです。そうであるならば、十代以外にも多くの被害が出ているという実態を直視して、使用の制限をあらゆる年代に広げて、「ハイリスク患者と判断される場合」に限った使用とするのが合理的です。

 厚生労働省は、タミフルの副作用被害のうち、肝機能障害や薬疹(やくしん)などについては救済給付を支給しているとしています。しかし、「異常な行動」や突然死については、被害者からの救済給付申請にたいし不支給決定をしています。今回の副作用報告で、転落や飛び降りまたはそれにつながる異常な行動の大規模な被害の状況が明らかになりました。この事実にたって、「服用と被害の因果関係を認めてほしい」「不支給決定を撤回してほしい」という被害者の声にこたえる必要があります。

 タミフルをめぐっては、販売元の中外製薬と厚生労働省との癒着が明らかになりました。一つは、副作用などを調査する厚生労働省研究班のメンバーに販売企業の中外製薬から計七千六百万円の寄付金が渡っていたことです。もう一つは、元厚生労働省の医薬安全局安全対策課長や医薬局審査管理課長を歴任した人物が二〇〇三年八月に同省を退職後二年一カ月で中外製薬に天下りしていることです。こんな癒着が、国民からも健康被害を受けている人々からも不信を招いています。

官業の癒着を断ち切れ

 タミフルの推定使用患者数は全世界四千五百万人のうち、日本が三千五百万人、八割近くを占めています。あまりにも異常な事態です。

 有害情報の解析と国民への公開は始まったばかりです。厚生労働省は対応の遅れを教訓として、今後、真剣な対応が求められます。

 厚生労働省は、行政と製薬企業の癒着をたちきり、薬の安全性確保に力をそそぐ必要があります。タミフルの使用制限を十代に限るとした対応を抜本的に見直すとともに、被害の救済を急がなければなりません。


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