2007年4月6日(金)「しんぶん赤旗」

イラク戦行き詰まり 米で議論

トルーマン・ドクトリン60周年

侵略重ねる体制見直せ


 イラク戦争が五年目に突入し出口の見えない中、ベトナム戦争を含む侵略戦争繰り返しの根底にある「戦争国家」体制を見直すべきだとの議論が米国で起こっています。(坂口明)


 「いま必要なのは、戦術や戦略の調整以上のものだ。批判し、解体さえすべきなのは、トルーマンが一九四七年に開始した『国家安全保障国家』そのものだ」―米国防総省を歴史的に解明した『戦争の館』の著者の米ジャーナリスト、ジェームズ・キャロル氏は指摘します(ボストン・グローブ紙三月十二日付)。

批判矛先根源に

 イラク戦争への批判が米国で広がりつつあるが、その矛先は根源に向けられるべきだ。同様の虚構で侵略戦争を重ねる背景には、今の米国が「安全保障」の名で戦争を繰り返す戦争国家(「国家安全保障国家」)になっている根本問題がある―そう述べてキャロル氏が振り返るのが、三月に六十周年を迎えたトルーマン・ドクトリンです。

 「世界史の現時点で、ほとんどすべての国が、(米国流の「自由」か、ソ連流の「恐怖と圧制」かの)異なる生活様式から一つを選ぶことを求められている」―四七年三月十二日、トルーマン大統領は上下両院合同会議で演説し、ギリシャ紛争への介入を承認するよう求めました。このトルーマン・ドクトリンは、「自由か独裁か」の白黒二分論に立つ、対ソ「冷戦」の開始宣言でした。

 演説の準備過程でアチソン国務次官(四九―五三年に国務長官)は、「たった一つのリンゴが腐ったため、たるの中のリンゴが腐ってしまうように」、ギリシャで左派勢力が勝てば、「イラン以東のすべての国に」、「小アジア、エジプトを通じてアフリカに」、「イタリア、フランスを通じて欧州に」危機が及ぶと訴えました。

 ここで初めて示された「腐ったリンゴ」論は、その後「ドミノ理論」に名前を変え、ベトナム侵略に使われました。キッシンジャー元国務長官が言うように、「ドミノ理論」は「(南)ベトナム防衛を二十年近く支えてきた中心的な安全保障仮説」(『外交』、九四年刊)となりました。

新「ドミノ理論」

 「希望のイデオロギーが憎悪のイデオロギーに打ち勝つには長い時間がかかる。撤退しない限り、われわれは勝利する」―昨年十一月十七日、ベトナムを訪問したブッシュ大統領は、ベトナム戦争の教訓について、こう語りました。国民が撤退を求めても、それを耐え忍んで戦争を続けていれば、ベトナムで勝てたはずだし、イラクでも勝てるというのです。

 ブッシュ政権は、二〇〇一年の9・11対米同時テロ後、「米国を支援しなければテロリストの味方だ」との単純な白黒二分論(ブッシュ・ドクトリン)で「対テロ世界戦争」を強行。それが完全に破たんすると、同戦争は、イラクから広がる「イスラム教ファシズム」の世界支配を阻止するためだとの新たな「ドミノ理論」を持ち出し、戦争の継続、拡大を合理化しています。

 にもかかわらず野党・民主党は、「イラク戦争が最初から間違っていたからではなく、戦争がうまくいかなかったから批判している」、〇八年大統領選の出馬表明者の誰が、侵略戦争繰り返しの根源にある問題を提起しているのか―キャロル氏は問いかけています。



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