2007年4月2日(月)「しんぶん赤旗」

高校教科書

“沖縄戦ゆがめる検定”

「集団自決」修正 体験者ら反発


 太平洋戦争末期の沖縄戦の悲惨さを物語る住民の「集団自決」で、日本軍の強制と誘導を明記した記述が高校の歴史教科書から消えました。文部科学省の検定意見によるもので、「軍隊は住民を守らない」という沖縄戦の教訓を心に刻んできた戦争体験者らは「従軍慰安婦問題などと同様に、日本軍の蛮行を否定したい自民党政府の政治的意図のあらわれだ」と怒りの声をあげています。

 「戦前、小学校の教員として何人もの子どもたちを戦場に送ったことを今でも悔やんでいる」と語るのは外間トヨさん(89)。「戦前の軍国主義教育がなければ、住民が『集団自決』に追いつめられることはなかった。沖縄から真実の声をあげるためにいっそう力を尽くさないといけない」と話します。

 今回の検定意見について文科省は、元軍人が起こした訴訟で命令はしていないという陳述があったことなどを理由にしています。しかし、沖縄から平和教育をすすめる会の山口剛史事務局長(琉球大学講師)は「事実認定もこれからの裁判で、証言にも立っていない元軍人の意見だけを採用しているのは不当で、意図的だ」と指摘します。

 今回の検定を、地元新聞各紙も一斉に批判。「沖縄タイムス」(三十一日付)は編集委員の論評で「慶良間諸島の『集団自決』では約八百人が亡くなった。死者の沈黙、家族を手にかけたゆえの沈黙、犠牲となった人数の数倍も数十倍も沈黙がある。その沈黙を利用して『集団自決』の真実をねじ曲げようとする動きを許すことはできない」と書いています。

 「琉球新報」も同日付の社説で「沖縄戦の実相を歪(ゆが)める検定になっていないか懸念する。歴史の受け止め方は人それぞれだろうが、国が歴史についての考え方を押し付けていいのだろうか」と疑問を呈しています。

 沖縄戦当時、米軍に追いつめられて手りゅう弾で「自決」する直前まで追い込まれたという、元ひめゆり部隊の宮城喜久子さん(78)はいいます。

 「教科書から日本軍の関与をなくすことは、この国のおかした罪を消すことになり、真実を見えなくした戦前の教育に後戻りさせることにつながります。今の若者たちには、真実を見つめる力をつけてほしい」(浅野 耕世)



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