2007年3月31日(土)「しんぶん赤旗」

主張

イラク特措法延長

自衛隊を撤退させるしかない


 政府は、今年七月末で期限が切れる「イラク支援特別措置法」を二〇〇九年七月まで二年間延長する「改正」案を閣議決定しました。イラクでの軍事作戦を強める米軍に自衛隊が空輸による支援を続けるためです。早期の成立をねらっています。

 イラクに軍隊を派遣した国はいま相次いで撤去・縮小しています。アメリカでも下院に続き上院が撤退期限を盛り込んだ補正予算案を可決する事態となっています。撤退の流れが強まるなかで、日本が延長を決めるのはあまりにも異常です。

米軍武力行使と一体

 イラク戦争は、イラクが大量破壊兵器をもっているとうそをいってブッシュ政権が始めた侵略戦争です。

 ブッシュ大統領は「情報が誤っていた」といいました。誤った情報をもとにしたのなら戦争そのものが誤りです。戦争の継続は誤りを重ねるものです。戦争が誤りなら日本の支援もまた誤りです。誤りを正さなければ国際的信用も得られません。

 安倍首相はイラクが累次の国連決議を無視したことを根拠にして、日本政府がアメリカの武力行使を支持したことには「正当な理由があった」(二月十三日参院予算委員会)と言い続けています。

 武力行使をするには安保理事会の承認が必要です。しかし、安保理はイラクへの武力行使を承認する決定を行っていません。国連が認めないアメリカのイラク攻撃は国連憲章違反です。安倍首相の言い分は国際的に通用しません。

 安倍首相は復興支援をしているのであって「武力行使を支援したことはない」ともいっています。これはあきらかなうそです。

 航空自衛隊が実施している輸送は、七―八割が米軍・多国籍軍向けです。兵員や軍事物資の補充がなければ戦闘を維持できません。米中央空軍のノース司令官は、空自などの空輸支援によって「確実に戦闘作戦が可能になる」(昨年七月)と強調しています。空自の輸送が米軍の軍事作戦の一部に組み込まれ、戦闘を支えているのは否定できない事実です。

 米軍の「武力行使と一体化」した自衛隊の活動は憲法違反というのが政府見解です。米軍はバグダッドや周辺地域で占領体制に反抗する勢力への砲撃・爆撃をくりかえしています。やっていることは武力行使であり、戦闘行為です。米軍に兵員や物資を輸送するのは武力行使と一体になった憲法違反の活動です。

 イラク特措法は「戦闘行為が行われていない」地域でしか活動を認めていません。現に戦闘が続いているバグダッドで自衛隊が米軍を支援するのは、特措法にもとづいても許されるものではありません。

 戦闘地域だからこそ、輸送機C130は常に地対空ミサイルによる攻撃を避けるためミサイルを別方向にそらすおとりの熱源体「フレア」を発射しながら着陸します。戦闘地域でなければ必要のない措置です。

イラクの痛みを知れ

 イラク戦争は、多くのイラク国民の命を奪い続けています。イギリスの医学誌『ランセット』が昨年十月に発表した死者数を六十五万人とする調査結果を、イギリス政府関係者が評価しています。避難民も数百万人にのぼります。これ以上、ブッシュ政権の軍事制圧作戦を後押しするなどとんでもないことです。

 航空自衛隊の戦闘地域での米軍への空輸支援は違憲、違法です。ただちにやめるべきです。イラク特措法の延長などとうてい許されることではありません。



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