2007年3月28日(水)「しんぶん赤旗」

オール与党・自公民 「逆立ち」政治

大企業誘致へ札束ばらまき競争

「雇用創出」というが…

増えたのは非正規と無法


 自民、公明、民主の各党などが進める「オール与党」の自治体が競い合うように大企業誘致のための巨額の補助金を出しています。対象企業一社当たりの限度額が百億円を超えるところも。「雇用の創出」をうたい文句にしていますが、増えたのは非正規雇用と職場の無法です。(矢守一英)


新規雇用なし

日産に116億円交付

神奈川

 民主党の衆院議員だった松沢成文氏が知事を務める神奈川県。同県では企業誘致のためと称して「インベスト神奈川」という制度をつくりました。

 この制度は、県内に大企業が本社、工場を建設した場合には五十億円、研究所の建設には八十億円の助成が受けられるというものです。

 日産自動車百十六億円、武田薬品工業八十億円、富士フイルム九十三億円、富士ゼロックス六十億円、リコー四十五億円、ソニー四十三億円…。

 大企業の十八社だけで六百五十八億円もの交付が認定されています。全国でも飛びぬけて多い金額です。

 県はこの制度を「県内の雇用確保」のためと位置付けています。しかし、リコーや富士フイルムの研究所では、新規の県内の新規雇用はゼロ。雇用の創出にはまったく結びついていません。

千葉

 千葉県の茂原市にある日立系企業「IPSアルファテクノロジー」。テレビの液晶パネルを生産するこの企業の誘致のために、県、市とも条例をつくり、県が五十億円、市が四十億円出すことを決めました。

 しかし、「IPS」の新規の正規採用はゼロ。従業員数千五百二十人のうち、正規職員は約六百六十人。すべて隣接地にある親会社の「日立ディスプレイズ」からの横すべりです。しかも親会社は千三百人の正規雇用を削減しており、その他の削減も合わせると差し引きで正規雇用が七百人減ったことが日本共産党県議団、市議団の調べで明らかになっています。

 投入した九十億円の税金は地元の雇用増には役立たず、日立のリストラのために使われたも同然です。

使い捨て労働

シャープに90億円

三重

 三重県が知事の「トップセールス」で九十億円もの税金を投入して誘致したのが亀山市のシャープ工場です。

 県は「一万二千人の雇用創出効果がある」「地域振興になる」と宣伝してきました。しかし、シャープ亀山工場で働く従業員のうち四分の三以上が請負中心の非正規労働者です。

 地元雇用や新規雇用は四年間でわずか二百二十五人。地元の亀山での採用はその四分の一にすぎません。

 労働条件も過酷です。シャープ亀山工場で働く労働者の多くは十二時間二交代で働く「業務請負」の労働者。土日も出勤で低賃金。それだけに長く継続して働けず、二、三カ月でくるくる変わる、若者の使い捨てが繰り返されています。

 外国人労働者の雇用も増えていますが、派遣・請負として無権利、低賃金で働かされています。

地元波及せず

松下に中小企業予算の2倍

兵庫

 プラズマテレビの生産拡大を狙う松下電器。今年の夏には、兵庫県の尼崎市で第二工場を稼働させます。さらに隣接地に第三工場の建設も予定しています。

 兵庫県は新工場を含む三つの工場に百七十五億円を支出することになります。県の補助金は全国でも例のない「上限なし」の青天井。県の中小企業対策予算(融資を除く)約八十億円の二倍以上の補助金が松下一社に投じられる計算です。

 百七十五億円には雇用の補助金(八億五千万円)も含まれます。しかし、松下尼崎第一工場の新規地元雇用は正社員は六人のみ、二百三十六人はすべて派遣労働者。効果はほとんどありません。

 派遣はその後「請負」に切り替えられました。日本共産党などの追及を受けて、期限付きの直接雇用に変わりつつありますが、県民の税金を使った企業誘致制度が不安定雇用を促進する構図になっています。

大阪

 大阪府が十億円を出して誘致した三洋電機の太陽電池工場(貝塚市)の場合は―。

 従業員三百六十人のうち、二百十人は請負労働者です。百五十人の正社員のなかで新規採用はわずかに十一人にすぎません。百三十九人はほかの工場からの赴任でした。

 さらに、「(部品は)特殊技術と資本力がいるため地元調達はない」と地元中小企業への波及効果もないことを会社自身が認めています。

トヨタ入居ビルに18億円

名古屋

 高層ビルラッシュの名古屋駅前。この三月にはひときわ高い「ミッドランドスクエア」がオープンしました。トヨタ自動車の海外営業部門などが入るこのビルに、国、県、名古屋市は合わせて十八億円余りの補助金を注ぎ込んでいます。

 「優良建築物等事業費補助金」などというのが名目とされていますが、日本一の大もうけをあげる企業の入居するビルになぜ補助金なのか。説明はつきません。


内閣府も効果疑問視

 内閣府が発行した『地域の経済2005』も企業誘致制度の効果に疑問を投げかけています。

 工場立地件数に関し、「補助金額が大きいからと言って、工場立地件数が多くなるという明確な関係は確認できない。補助金90億円の三重県と2億円の栃木県を比べると、04年の工場立地件数はほぼ同数になっている」、雇用面でも「補助金の効果が明確に現われているとは言い切れない」と述べています。

 さらに、工場の撤退や閉鎖のリスクをあげ、18県では、途中撤退の場合に補助金の返還を求める制度を設けていないと指摘しています。


福祉や中小企業の応援こそ

雇用増やす日本共産党

 大企業誘致のための巨額補助金。上限十億円以上の補助規模の県は三十五道府県にのぼります。

 こうした制度を支えているのが、自民、公明、民主、社民の「オール与党」です。

 日本共産党は、企業誘致には反対ではありません。問題はその中身です。多くの場合は、莫大(ばくだい)な利益をあげ、負担能力を持つ大企業へのばらまきとなるようなケースです。

 日本共産党は、弱い立場の人の福祉を削りながら、大企業には大盤振る舞いという「逆立ち」政治は自治体のやることではなく、改めるべきだと主張してきました。

 「空前のもうけをあげている大企業にばらまく札束があるなら、福祉に使え、くらしに使え、中小企業に使え」(志位和夫委員長)と訴えています。

 雇用促進でも、日本共産党は奮闘しています。

 京都府では、補助金を受けている企業に正社員の雇用を促すよう企業立地・育成条例を三月に改正しました。青年と力を合わせ、日本共産党が運動し府を動かしました。

各道府県の企業誘致補助金
最大補助金額、億円
各県HPなどから作成
図

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