2007年3月22日(木)「しんぶん赤旗」

私有財産尊重 格差の是正へ

中国全人代で具体化


 十六日に閉幕した中国の第十期全国人民代表大会(全人代)第五回会議は、「民生重視」「格差是正」の方向を改めて強く打ち出したことが特徴でした。


 特に具体策として注目された一つが、これまで全国各地で試験的に進めてきた「新型農村協力医療制度」を、来年には全農村で完全実施するとしたことです。

農村医療深刻

 中国では昨年から「調和のとれた社会」のとりくみを進め、格差是正を強調してきました。しかし、昨年の都市部と農村部の住民一人当たりの収入の格差は三・二七倍で、前年の三・二二倍からわずかですが広がっているという現実が依然として残っています。特に農村の医療体制確立は緊急課題でした。

 公務員などを除く都市部労働者の医療保険制度は二〇〇〇年からスタートしていましたが、農村部ではようやく〇三年に発足。「入院・手術をすれば年収の何倍もの金がかかる」という現状を、農民、地方政府、中央政府三者が費用負担する制度を行き渡らせて、農村医療の深刻さを打開しようという試みが本格化しています。

 「民生」に大きくかかわるものとしては、物権法が高率で採択されたことも今大会の大きな特徴でした。

 同法は、二年前の憲法改定で定められた「私有財産の尊重」を法律分野で具体化したもの。国民の財産や所有権の不可侵を改めて確認し、勤労意欲を前進させようとするものです。企業家や都市の住民にとっては区分所有が明確になり、所有権がより保障されます。

 中国では全人代直前の二月末に中国共産党機関紙・人民日報に掲載された温首相の「社会主義初級段階の任務と対外政策」が話題となりました。

 この論文は(1)生産力の発展(2)社会の公正と正義―を二大任務として提起しました。温首相は全人代終了にあたっての会見で、「中国の目標は成熟した資本市場をつくることだ」と強調、各種生産力向上への意欲を改めて表明しました。物権法はその保障の土台ともいえるものです。

 物権法に基づく施策は、庶民の生活にも及びます。

減らない汚職

 政府報告は、「大衆の利益にかかわる際立った問題が十分解決されていない」として、その事例として「土地収用、家屋立ち退き」などをあげました。同法は、こうした無法・強引な立ち退き強行の歯止めにもなります。

 農民にとっても、土地請負経営権が条文化されたことで、請負期間の終了後もその土地を請け負うことができます。

 これら「民生重視」を阻害する要因となっているのが、一向に減らない汚職・腐敗です。温首相は政府報告や記者会見で、「政治体制の改革」という言葉を初めて使って、問題解決への決意を表明しました。

 また汚職事件の背景に「権力の過度な集中」があると指摘、許認可権の縮小などを提示しました。

 しかし「改革」の具体的な制度化はこれからです。秋の中国共産党第十七回大会、来年の第十一期全人代第一回会議で党・国家の新しい指導部が選出されるなかで、今年の全人代で打ち出された方向がどう結実されていくのか、国内外の関心が集まっています。(北京=菊池敏也、外信部=小寺松雄)


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