2007年3月17日(土)「しんぶん赤旗」

自、公が生んで民主が助けた
規制緩和の「息子」

ライブドア 堀江被告に実刑

「改革の旗手」と持ち上げた自民


 粉飾決算などの罪に問われたライブドア元社長の堀江貴文被告に懲役二年六カ月の実刑判決が下されました。問題は、一新興企業の経済事件にとどまりません。巧妙な「錬金術」を可能にした金融・証券分野の規制緩和路線と、それを推し進めた自民・公明政権、手を貸した民主党の責任も問われています。(矢守一英)


市場を欺く

 「株式時価世界一の会社にする」と豪語した堀江被告。ライブドアは自社の株価をつり上げる株価至上主義の経営に突き進みました。粉飾決算を行う過程で株価下落を避けるために、虚偽の情報を証券市場に流していました。

 市場と投資家を欺いた「錬金術」の手法は三つありました。一株を何株にも分割して株価をつり上げる株式分割。つり上げた高い株価を使って狙いを定めた会社を買収する株式交換。企業合併・買収を進め、利益を還元する道具として利用した投資事業組合(投資ファンド)です。

 株式分割は、小泉内閣時代の二〇〇一年十月の商法「改正」で規制が撤廃され、大幅な分割が可能になりました。

 自社株取得が原則自由になったのもこの時期です。株式交換は、小渕内閣時代の一九九九年の商法「改正」で解禁されました。

 小泉前内閣は「貯蓄から投資へ」とあおり立て、規制緩和の流れをいっそう加速させました。

 〇三年度の税制改定では、もともと低かった株式売買益や配当にかかる税率20%を預金金利より低い10%に引き下げました。株式売買委託手数料が大幅に安くなったこともあり、インターネットを使った株取引も飛躍的に増えました。

 「小泉内閣の規制緩和のおかげで、非常に商売がしやすくなっています」

 堀江被告自身が自社の機関誌上で語ったように、ライブドアの行動が「構造改革」=規制緩和万能路線に乗ったものであることは、当事者自身も認めるところでした。

 安倍首相も「小泉内閣が構造改革を進めなければ、堀江氏は出てこなかった」(〇五年八月、当時自民党幹事長代理)と述べていました。

密接な関係

 自民党と堀江被告との密接な関係も尋常なものではありませんでした。〇五年の総選挙では、「改革の旗手」「わが息子」と持ち上げ、竹中平蔵郵政民営化担当相(当時)や武部勤自民党幹事長(同)らが選挙区へ応援に入り、事実上の党公認候補として扱いました。

 選挙から一カ月後の〇五年十月にはふたたび自民党本部で武部・堀江会談が行われています。この時、武部氏は堀江被告に「党改革を進めるうえで経営者としてのアドバイス」を求めたとされます。

 規制緩和を通じて、株式市場は「投機の舞台」になったといわれます。マネーゲームに巻き込まれた個人投資家の被害の拡大が懸念されてきました。ライブドア事件はその典型です。株価急落で損害を被ったとして、株主による損害賠償請求訴訟も起きています。

 ライブドア株主被害弁護団副団長の近藤博徳弁護士はこう指摘します。「今回の事件は、日本版金融ビッグバンと呼ばれた一連の規制緩和が描いた危険が現実になったものといえます。個人投資家を守るルールも不十分で、このままでは、同じような事件が起きてもおかしくない状況です。企業が上場する際の基準の厳格化など事前規制の強化を含む総合的なルールの確立が重要になっています」

図

堀江被告と自民党政治 蜜月の語録

●堀江貴文被告

 「小泉内閣の規制緩和のおかげで、非常に商売がしやすくなっています」(ライブドア社の機関誌『ライブドア』2005年冬号の対談で)

●武部勤自民党前幹事長

 「堀江君は将来の日本を背負っていくリーダーになる方だ」(2005年8月、選挙中の発言を振り返って)

●小泉純一郎前首相

 「新しい時代の息吹というかな、若い感覚をこれからの日本の経営に与えてくれる」(2005年8月16日、記者団に)

●安倍晋三首相

 「小泉内閣が構造改革を進めなければ堀江氏は出てこなかった。自民党が変わったことがわかる」(2005年8月17日、テレビ番組で。当時は自民党幹事長代理)

表


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