2007年3月13日(火)「しんぶん赤旗」

'07春闘 挑む

2兆円の利益

トヨタのボロもうけ

労働者・下請けに還元を

非正規含め賃上げの声


 貧困と格差解消のため全労働者の賃金引き上げが焦点となっている07春闘。2兆円もの営業利益を上げているトヨタ自動車では、膨大な利益を単価切り下げに苦しむ下請け企業や、非正規労働者を含めすべての労働者に還元してほしいとの声が強まっています。


 「昨年を上回る賃上げ要求といわれても、ピンとこない。満額回答を引き出しても、だれもが平均まで上がるわけではないからなあ」と労働者はそう口をそろえます。

 トヨタ労組(組合員五万八千人)は、昨年を五百円上回る八千四百円の賃上げ要求を掲げています。定期昇給相当分六千九百円に賃金改善分千五百円を加えた額です。

回答額の2割

 昨年は七千九百円(定期昇給相当分六千九百円と改善分千円)の満額回答でしたが、だれもが七千九百円上がったわけではなく、大幅に下回る労働者が多数出ました。

 五十代の労働者は「私の場合、千三百六十円しか上がっていない。回答額の二割にも満たない。これでは仕事も春闘もがんばる気持ちが薄れる」と嘆きます。

 財界・企業は、全労働者の賃金を引き上げるベア(ベースアップ)を拒否し、成果主義賃金を導入するなど、人件費総額を抑え込む戦略をとってきました。このもとで連合は昨年からベア要求ではなく、「賃金改善」という方針を打ち出しました。賃金引き上げなどの増額分(要求原資)の配分を、各社・労組の対応に委ねる考え方です。

 どの層に重点配分するのか、低賃金層を底上げするのかなど、各社によって変わります。

 トヨタ社員(57)は「トヨタの場合、査定によって昇格する労働者だけに重点配分している。毎年三千八百人くらいおり、昇格するごとに一万円から一万八千円くらい上がる。昇格しない労働者は何年たってもほとんど上がらない。その上、成果主義による査定があり、さらにアップ率に格差がつく」と話します。

 エキスパート(EX)と呼ばれる勤続十七年の旧班長クラスの場合、昨年は五千八百円程度のアップしかなく、定期昇給相当分にも達しません。

 企業の思惑で左右される賃金は、正社員化された期間工の労働者にも影響を与えています。

正社員で収入減

 トヨタはこの数年、年間千人規模で期間工を正社員化。一万人の期間工など非正規社員が製造現場労働者の三割を超えていますが、賃金は正社員の二分の一から三分の一しかありません。

 ところが正社員になっても、逆に賃金がダウンするケースが続出しているのです。原因は賃金体系の変更。二〇〇四年四月から「年齢給」に代わって「習熟給」を導入。年齢でなく勤続年数ではかる制度に変えました。

 例えば二十五歳の期間工が正社員になると、これまでは同年齢の正社員と同等の年齢給が保障されました。ところが習熟給では正社員としては勤続年数ゼロとみなされ、高卒新入社員と同等の最低ランクに位置付けられました。こうして賃金がダウンした延べ三千人にその補てんのため、一定の賃上げ原資を重点配分しなければならない状況も生まれています。

 元期間工の三十代の男性社員は「正社員になったのはいいが、期間工のときより賃金が下がった」と困惑しています。

 トヨタは史上空前の利益を上げながら、千五百円の賃金改善要求にも、「国際競争力を弱める」として賃金抑制の姿勢を強めていますが、矛盾を広げざるを得ません。

 トヨタ社員(59)は、こう訴えます。「膨大な利益は、下請けへの過酷なコスト削減の強要や過労死するような長時間過密労働、期間工など非正規労働者の犠牲の上に築かれたものです。下請け関連企業の営業と利益を守るとともに、すべての労働者に利益を還元する社会的責任を果たすべきです」


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