2007年3月11日(日)「しんぶん赤旗」

「慰安婦」問題 広がる安倍批判

「元性奴隷の古傷開く」

ニューヨーク・タイムズ紙

英誌『エコノミスト』社説 「日本への評価低める」


 【ワシントン=鎌塚由美】米紙ニューヨーク・タイムズ八日付は、一面で「慰安婦」問題を取り上げ、「強制の根拠はなかった」などと述べた安倍首相の発言がアジア諸国および米国にも波紋を広げていることを伝えています。

 「首相の否定は、日本の元性奴隷たちの古傷を開いている」と題してオーストラリア・シドニーから発信された記事は、七日に現地の日本領事館前で行われた元「慰安婦」たちによる「水曜デモ」を紹介。台湾の呉秀妹さん、韓国の吉元玉さん、オランダ出身でオーストラリア人のジャン・ラフ・オハーンさんの証言と、安倍首相による「慰安婦」否定発言を紹介しました。

 記事は、安倍首相の発言が、アジア近隣諸国の抗議を引き起こしているとし、「日本が地域諸国との歴史問題に決着をつけていないことを再び浮き彫りにした」と指摘しています。さらに安倍首相発言により、「東アジア諸国で、近年巻き起こっていた歴史問題の議論に参加することに強く抵抗していた米国をも引き込んだ」と述べました。

 安倍首相の発言が、日本政府に明確な謝罪を求めて提出された「米下院の決議案に弾みを与えた」と伝えました。

 安倍首相が下院決議案にふれた五日の発言については、「彼は、下院決議案は『客観的事実に基づいていない』とし、採択されたとしても日本は謝罪しないと付け加えながら、民間業者が女性たちに(売春を)強いたと述べた」と紹介。それに対し、決議案を提出したホンダ議員が同紙に「安倍首相は、事実上、女性たちはウソをついているといっている」とし、「日本の歴史家たちによって明らかになった証拠や『慰安婦』の証言から判断して、安倍氏が正しいとは信じがたい」と語っていることを伝えました。


 【ロンドン=岡崎衆史】英誌『エコノミスト』(三月十―十六日付)は、「従軍慰安婦」に関する安倍晋三首相の発言について社説を掲載し、「過去の傷に新たな辱めを加えた」とし、「安倍氏は恥を知るべきだ」と非難しました。

 『エコノミスト』は、「従軍慰安婦」問題で、旧日本軍による狭義の強制性を安倍首相が否定していることについて、元「慰安婦」の多数の証言があることを挙げ、「彼は耳が聞こえないのか」と批判。「彼女らの証言に疑問を呈すること、すなわち、彼女らをうそつき呼ばわりすることで、安倍氏は、過去の傷に新たな侮辱を加えた」と指摘しました。さらに、首相の発言は、近隣諸国の不信を招くとともに、日本による世界での復興支援活動の評価を低めることになると警告しました。

 「慰安婦」の強制性を示す証拠については、「これまでの日本政府が隠ぺいし、破壊しなければ、より多くの証拠が残っているだろう」とも述べました。

 『エコノミスト』はまた、安倍首相が「美しい国」日本に「誇り」を抱くよう国民に訴えていることを紹介し、「彼(首相)は日本の過去についてのうその上に未来の誇りを築くことができると考えているようである」と酷評しました。

 社説は、「六十年が経過した。故意の記憶喪失は現代の民主的日本にふさわしくない。安倍氏は恥を知るべきだ」と結びました。


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