2007年3月1日(木)「しんぶん赤旗」
主張
日本版NSC
海外で戦争するための司令塔
政府の「国家安全保障に関する官邸機能強化会議」(議長・安倍晋三首相)は、「国家安全保障会議」の創設を柱とする最終報告書を安倍首相に提出しました。
会議は、首相(議長)、内閣官房長官、外務大臣、防衛大臣で構成し、外交・安全保障の重要事項を審議します。アメリカのNSC(国家安全保障会議)をまねているために日本版NSCといわれます。報告書は専任事務局(十―二十人)に自衛官を「積極的に活用」することや秘密保護法制定も提案しており、見過ごしにはできません。
卑屈な対米追随
報告書が認めているように日本版NSCは、首相の主導権のもとで「世界のなかの日米同盟」路線を進める「司令塔」です。
現在の「安全保障会議」は、「国防」や「重大緊急事態」といった「日本防衛」に限定した議論の場です。「日本防衛」と無関係のイラク戦争やアフガニスタン報復戦争といったアメリカの先制攻撃戦争への自衛隊派兵は本来想定していません。
そのため日本版NSCを新設し、アメリカの要請に応えた外交・軍事の分野での世界的役割を拡大しようというのが安倍首相のねらいです。
中核は自衛隊の海外派兵です。内閣官房副長官補として安全保障問題を担当した大森敬治現オマーン大使は、日本版NSCが自衛隊の「使い方を内外にしめさないといけない」とのべています(『論座』二〇〇五年五月号)。日本版NSCが、イラク戦争など「日本防衛」と無縁のアメリカの戦争に日本を参加させる推進力となるのは明白です。
安倍首相は、日本版NSCは首相官邸とホワイトハウスとの直接対話の窓口といっています。直接対話によって米政府の考えをいち早く知り、アメリカの期待する方策を「自主性」を装いながらうちだす、これが安倍首相のもくろみです。それは、アメリカの歯止めのない対日要求に拍車をかけることでしかありません。
アーミテージ元米国務副長官らは先月、日米同盟強化の政策提言を発表しました。集団的自衛権の行使を可能にする議論や自衛隊の海外派兵恒久化法の議論を促し、日米作戦統合や司令部の一体化、武器輸出三原則解除などを要求しています。日本版NSCの新設でアメリカいいなりが加速されるのはあきらかです。
安倍首相が、憲法解釈を変えて集団的自衛権の行使を可能にする問題を日本版NSCで「研究することもある」と述べたことは重大です。集団的自衛権の行使が憲法違反だということは政府見解で明確です。首相の発言は官邸が「司令塔」であることを盾にして、集団的自衛権行使は憲法違反であると主張する内閣法制局をおさえこむ思惑があることを否定できません。
どこからみても日本版NSCは憲法の平和原則に反するものであり、とうてい認めることはできません。
孤立する軍事偏重
報告書は北朝鮮の核や世界のテロの脅威を口実に軍事対応を強めようとしていますが、そもそも世界情勢の見方が誤っています。北朝鮮問題も国際社会が一致して外交的・平和的解決をめざしています。テロも外交的手段による解決を求める主張が主流です。アジアをはじめ平和の地域共同体が躍動をはじめています。日本版NSCによって、日米軍事同盟を強化するということ自体が世界で孤立しています。
憲法九条を生かした外交を強めることこそ、日本が進むべき道です。