2007年2月18日(日)「しんぶん赤旗」

主張

米軍再編特措法案

札束による協力強制をやめよ


 政府が米軍再編に国民の血税を投入するための特別措置法案を国会に提出しました。

 沖縄から米海兵隊の一部が移転するグアムの米軍基地内に政府系金融機関である国際協力銀行の資金を使って米軍家族向け住宅や関連施設を建設することや在日米軍基地の再編を受け入れる市町村に計画の進み具合に応じて「再編交付金」を出すことなどが法案の柱です。

 海外の米軍基地強化にまで税金を支出し、札束をちらつかせて地方自治体に米軍再編協力をせまる、異常だらけの法案です。

海外基地の費用負担

 ブッシュ政権が進めている米軍再編は、アメリカが先制攻撃戦争をはじめるさい、いつでもどこからでも米軍が出撃できるようにするための態勢づくりです。日本で米軍の部隊や基地を再編するのも、日本の基地負担を軽減するどころか、アメリカがイラク戦争のような侵略戦争をおこす危険を大きくするものです。

 日本をアメリカの戦争にまきこみ、憲法がめざす平和への道を閉ざすことにもなります。憲法で戦争放棄を明記し、国際的なもめごとは平和的に解決することをめざす日本が、米軍再編を促進すること自体許されるはずがありません。

 沖縄から米海兵隊を移転させグアム基地を強化する米軍の計画を日本が支援するというのは異常のきわみです。グアムは「太平洋の米前方展開の最重要拠点」(ローレス米国防副次官)です。「日本防衛」とも無縁であり、日米安保条約の適用地域ですらありません。支援の理由はどこにもありません。

 外国の基地建設の費用をだすというのは主権国家ではありえないことです。アメリカの同盟国で、アメリカ領土での再編費用を負担する国は日本以外にありません。日本外務省も事例を「承知していない」といっています。沖縄県民の基地負担の「軽減」をだしにして、グアム基地強化を支援するのをやめるべきです。

 「再編交付金」制度も問題があります。米軍基地再編を受け入れる市町村には交付金を出し、そうでないところには出さないしくみです。

 「再編交付金」は、基地があるため固定資産税がとれないといった財政的影響に配慮した現行の基地交付金、調整交付金とは異質です。交付金支出の客観的基準もなく、“協力”の度合いに応じて金額をつりあげるひどいしくみです。政府の自治体いじめで財政が切迫している状態を逆手にとって、“カネがほしければ再編を受け入れよ”とせまる政府の態度はきわめて卑劣です。カネの力で地方自治体を思い通りにするような横暴を許すわけにはいきません。

 米軍再編経費は、特措法による負担だけではありません。グアム基地の建設や沖縄の新基地建設などの負担が待っています。総額で三兆円もの巨額です。いずれ再編経費の確保のために国民生活予算をいっそう縮減する事態になるのは目に見えています。生活を守るためにも米軍再編を政府いいなりに進めさせるわけにはいきません。

平和的生存権がある

 米軍基地再編は地域の平和的生存権を奪い、住民のいのちさえおびやかします。だからこそ沖縄、岩国、神奈川など関係する自治体・住民はかつてない反対運動をつづけています。住民は地域で憲法によって平和的に生きる権利を保障されています。カネで自治体に米軍基地再編を強制するのは憲法の精神に反します。「再編特措法」は撤回すべきです。


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