2007年2月5日(月)「しんぶん赤旗」

主張

朝鮮有事対処計画

平和的解決の流れに水をさす


 日米両政府は朝鮮半島有事を想定し、韓国に居住する日米民間人の退避などの軍事対処計画づくりを開始し、秋の合意をめざしています。

 麻生外相は詳細な説明を避けながらも、日米ガイドライン(防衛協力指針)に沿って退避計画を「検討しているのは当然」(一月五日)とのべています。スノー米大統領報道官も、すべての選択肢を念頭に置き「計画は常に作成される」とのべ(同日)計画づくりを事実上認めています。

有害無益な軍事対応

 日米両政府は二〇〇二年十二月の日米安全保障協議委員会(2プラス2 外交・軍事担当閣僚協議機関)で、日米ガイドラインにもとづく日米共同の戦争計画を決定し、「更なる充実」を合意しました。

 これにもとづき、アメリカがアジア太平洋地域のどこかで戦争をはじめるときの自衛隊の米軍への作戦支援や民間港湾・空港の米軍提供などを定めた日米共同の作戦計画を見直し、更新する作業を続けています。アメリカが戦争にふみだす場合にはいつでも、最新情報にもとづいて作戦行動ができるようにするためです。朝鮮半島有事を想定した軍事対処計画づくりもその一環です。

 重大なのは、北朝鮮の核開発をめぐる中国、アメリカなどの六カ国協議がおこなわれており、国際社会が北朝鮮問題を粘り強く平和的・外交的に解決しようとしているそのときに、朝鮮半島有事を想定し、軍事対処を計画していることです。

 戦争ではなく話し合いで、朝鮮半島の非核化をめざすことはアジアと世界の願いです。いま必要なのはこの国際社会のとりくみをさらにつよめることです。朝鮮半島の有事を想定して軍事対処計画をつくるのは、こうした国際的努力を損なうものでしかありません。

 国連安保理事会も昨年九月、六カ国協議の当事国に「外交努力を強め緊張を激化させる可能性があるいかなる行動も慎(む)」ことを求めた決議を全会一致で採択しています。

 日米は六カ国協議の当事国であり、国連決議にも従う義務があります。安保理決議に反し、国際社会の一致した平和の努力に水をさして、団結を損なうような軍事対処計画づくりが許されるわけがありません。

 日米の軍事協力強化にアジア諸国の警戒心は一段と高まっています。軍事対処計画や「周辺事態法」に「注目せざるをえない」(シンガポール華字紙「聯合早報」)、「日本は米国とのより強力な軍事同盟を模索」(韓国英字紙「コリア・ヘラルド」)といった批判が広がっています。

 アメリカは一九九四年に北朝鮮の核開発疑惑を口実にして軍事制裁をくわだてましたが、日本の協力が得られず断念した経過があります。日本が米軍に軍事支援することはアメリカの先制攻撃戦争の危険を大きくするだけです。だからこそアジア諸国がつよく警戒するのです。

九条を生かしてこそ

 軍事一本やりの政策では、国際的問題を解決できないことはアメリカのイラク戦争の失敗をみてもはっきりしています。

 軍事同盟で紛争に介入する時代は過去の時代の遺物になりつつあります。アジアをはじめ世界各地域で軍事同盟に代わって力を発揮しているのが平和の共同体です。紛争を戦争ではなく外交的・平和的方法で解決する流れは憲法九条と同じです。

 日米軍事強化方針はアジアの平和にとって有害無益です。軍事対処計画づくりはやめるべきです。


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