2007年2月1日(木)「しんぶん赤旗」

憲法 暮らし 政治とカネ

本当に対決する党は?

衆参の代表質問から見えたもの


 「政治とカネ」をめぐる疑惑が噴出し、柳沢厚労相の「女性は子どもを産む機械」発言が飛び出すなど、ふらふらの安倍内閣のもとで始まった通常国会。一般紙は民主党・小沢一郎代表が唱えた「憲法改正か生活維新か」を対決点であるかのように描きます。しかし、憲法でも、格差・貧困問題でも、「政治とカネ」でも、本当の対決点はどこにあるのか―二十九日から三十一日までの衆参の代表質問からみえたものは…。


安倍改憲路線

共産 世界に逆行と批判

自公 9条改悪をあおる

民主 態度明らかにせず

写真

(写真)市田忠義書記局長が質問に立つ参議院本会議=31日、国会

 施政方針演説で「憲法を頂点とした基本的枠組みが、時代の大きな変化についていけなくなった」として、「憲法改正」と、改憲手続き法案の今国会成立を声高に叫んだ安倍晋三首相。この露骨な改憲路線を正面から批判し、対決したのは日本共産党でした。

 日本共産党の市田忠義書記局長は、施政方針演説について「現憲法のもと、第二次世界大戦後、日本国民が営々として歩んできた営みへの、根本からの否定そのものだ」と批判。イラク戦争とそれに続く軍事占領が破たんに直面し、国際的にも「戦争のない世界」への先駆けとして憲法九条の役割が注目を浴びていることにも触れながら、「憲法にもとづく戦後体制を時代にあわなくなったとする総理の立場は、まさに世界の流れに反した逆流でしかない」と強調しました。

 それに対して、民主党の小沢一郎代表は改憲賛成の持論を封じ「今、政治がなすべきことは憲法改正なのか」と述べ、憲法問題でみずからの態度を明らかにすることを避けました。同党の輿石東参院議員は「憲法改正は、もっと時間をかけ、国民的合意を得て成立させることが重要だ」と述べ、改憲論議の“成熟”を求めるだけで、自民、公明と合作で進めてきた改憲手続き法案については、触れることもしませんでした。

 自民・公明は安倍改憲路線を後押ししました。自民党の中川昭一政調会長は、改憲手続き法案の「一刻も早い成立」とともに、「あるべき憲法の姿について十分な審議を」と述べて、改憲をあおりました。公明党の太田昭宏代表も、改憲手続き法案の「今国会での成立を」と主張しました。

事務所費

共産 率先して事実明かせ

自民 「“法”にのっとり処理」

民主 参院では言及もせず

 冒頭から焦点となった「政治とカネ」。なかでも「事務所費」疑惑は、現職閣僚をはじめ、自民、民主両党の幹部にまで広がっています。

 ところが、安倍首相は自分が任命した閣僚や党幹部の疑惑が広がっているのに、「法にのっとった処理がなされているとの報告を受けている」(三十一日、参院本会議)と開き直りました。

 二十九日の衆院代表質問には事務所費疑惑が指摘されている当事者三人が立ちましたが、「事務所費の透明化のあり方について党として真剣に検討をすすめている」(自民党の中川昭一政調会長)「(事務所費について)私たちはすでに適切に処理している旨説明している」(民主党の松本剛明政調会長)と述べるだけでした。

 民主党の小沢一郎代表は「私も含め、責任ある立場の政治家は事務所費について詳細を公表することにしたらどうか」と提案しましたが、その後の記者会見で自身の詳細について「(公表する)タイミングはそのときの判断」と述べたと報じられています。続く参院代表質問では、同党から事務所費問題への言及さえありませんでした。

 市田氏は三十一日の参院本会議で「疑惑をかけられた閣僚や政治家は、保管が義務付けられている領収書と帳簿を公表するなど、自ら率先して事実を国民の前に明らかにするべきだ」と提起。安倍首相に「ことは自分が任命した閣僚の疑惑だ。首相として何をどうするつもりか」と任命責任をただしました。

 衆院では志位和夫委員長が、疑惑のある伊吹文明文科相、松岡利勝農水相に「問題がないというなら、領収書と帳簿を明らかにする意思があるか」と追及。他党は疑惑閣僚に質問することもありませんでした。


伊吹文科相 「家賃がタダだから疑惑があるという誤った認識を前提にした議員の示唆に答えるのは、法律上やや問題がある」(30日、衆院本会議。志位氏の「〈事務所費の〉領収書と帳簿を明らかにする意思があるか」との質問に)


松岡農水相 「法律に定められた通りのことを報告して疑惑といわれるのは心外だ」(同)


安倍首相 「(閣僚から)法にのっとった処理がなされているとの報告を受けている」(31日、参院本会議。市田氏の質問に)

格差と貧困

共産 予算・雇用の転換迫る

首相 「格差」の言葉さえなし

民主 「構造改革」には無反省

 「政府は格差という言葉を避けているが、格差が存在するのは紛れもない事実」

 自民党の青木幹雄参院議員会長ですら、“苦言”を呈するほど格差と貧困の拡大が深刻です。自民・公明政権がすすめてきた「構造改革」の結果です。

 ところが、安倍首相は、「成長のシステムを構築することにより、成長の成果を広くいき渡らせることが必要」とあくまでも大企業のための政治をしていく姿勢です。

 民主党の小沢一郎代表は、「格差社会を是正する生活維新を実現」とのべ、同党の松本剛明政調会長は、「非正規の著しい増加の主因は、たび重なる派遣法制の変更にある」と政府を批判しました。

 しかし、これまで「構造改革」を競ってきたのは民主党。原則禁止だった派遣労働を原則自由にするなど数々の法改悪に賛成してきた反省はありません。党内にも「かつては小泉政権に『改革競争』を挑み、構造改革路線を党のマニフェストに掲げて選挙も戦ってきた。それだけに、小沢氏の政策に対するとまどいは消えない」(「朝日」三十一日付)という指摘もあります。

 これにたいし、日本共産党の志位和夫委員長は、二つのパートをかけもちで働きづめの母子家庭の実態や国民健康保険証をとりあげられ受診を控える世帯など、国民のくらしの実態から貧困と格差の打開の方策を、予算の転換と雇用のルールの確立の二つの点から提起しました。

 市田書記局長も、「インターネットカフェ」で寝泊まりする若者など、働いているのに貧困から抜け出せない異常を追及。偽装請負など大企業での違法な派遣労働の是正を迫りました。

 安倍首相も、派遣労働者への正規雇用申し込み義務の「厳格な指導」と偽装請負の解消に最善をつくすと答弁せざるをえませんでした。


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