2007年1月30日(火)「しんぶん赤旗」

最低賃金法の改正

ワーキングプアなくす力に

解説


 今国会に提出される最低賃金法改正案の要綱が二十九日発表され、すべての労働者が対象となる「地域別最低賃金」を決めるさい、「生活保護との整合性に配慮する」ことが盛り込まれました。

 生活保護水準にも満たない最低賃金を抜本的に引き上げ、働いても生活保護水準以下の生活しかできない「ワーキングプア」をなくす力になるもので、労働者・国民のたたかいの成果です。

 日本の(地域別)最低賃金は、生活保護水準より低いうえに、地域によっても格差があります。

 最高でも時給七百十九円(東京)、最低は六百十円(青森など)。フルタイムで働いても月収十―十二万円台にしかなりません。全労働者の平均賃金の約30%しかなく、50%程度あるヨーロッパと比べて大違いです。

 ところが政府は、最低賃金を抜本的に引き上げるのではなく、“生活保護基準が高すぎる”といって、老齢・母子加算を削減・廃止するなど生活保護の方を逆に引き下げようとしています。

 低賃金労働者を生み出す非正規雇用の拡大に歯止めをかけるとともに、こうした生活保護の切り捨てを許さず、全国どこで働こうが人間らしい生活ができる水準まで引き上げることが急務です。

 最賃法改正の直接のきっかけは、もう一つの最賃である「産業別最低賃金」の廃止を求める財界の要求にこたえて、政府が二〇〇四年、規制緩和・民間開放三カ年計画で廃止を含む見直しを打ち出したことでした。

 しかし、その後の審議会では、低賃金労働者の急増と企業への批判が、労働者だけでなく公益委員からも出されました。その結果、産業別最低賃金は枠組みを継承するとともに、地域別最低賃金を強化する生活保護水準への配慮が盛り込まれることになりました。

 全労連などが「最低賃金の生活体験」を通じて低すぎる最低賃金の実態を社会的に告発し、各地の自治体で制度改善を求める意見書が可決されるなど世論と運動が広がったことが背景にありました。

 貧困と格差が拡大するなか、全労連も連合も今春闘で非正規労働者の賃金について「時給千円以上」を一致して掲げています。たたかいの成果を力に、実際に大幅引き上げを勝ち取るとともに、「全国一律最低賃金制」の確立へとすすむことが求められています。(深山 直人)


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