2007年1月29日(月)「しんぶん赤旗」

大企業役員の巨額報酬

欧州各国で問題に

仏で「節度ある額」勧告


 【パリ=浅田信幸】一部大企業幹部の法外な高給への批判と怒りが、欧州でもこのところ高まっています。四月に大統領選挙を迎えるフランスでは、経営者団体が選挙の争点に浮上することを懸念し、「節度ある額」を勧告しました。

格差は5百倍

 ロイター通信によると、国際的に著名な企業家や政治家、学者を集めた「世界経済フォーラム」(ダボス会議)の開催国スイスのプロテスタント教会連合指導者ウェーバー氏は二十三日、フォーラム開催に向けて「トップ経営者の報酬は法外なものになっている」と指摘し、論議を呼びかけました。

 同氏は、数十年前には一般労働者と最高経営責任者(CEO)の給与比率は一対四十であったのが、今日では一対五百にまで拡大しているというデータを示し、「単純に言って多すぎる」と批判。たとえばスイスに本社がある世界有数の金融機関UBSの二〇〇五年における同比率は、一対五百四十四だと指摘しています。

 企業経営者の超高給問題が国際的に注目されるようになったのは一九九〇年代の初めころからです。今日でも米国の企業経営者が関心の的になっていますが、欧州も例外ではなく、近年ことあるごとに社会的な問題になってきました。

年給13億円も

 ドイツでは三年前、ドイツ銀行が行員六千人の解雇方針を明らかにする一方で、アッカーマン総裁の年間報酬が一千万ユーロ強(当時のレートで約十三億五千万円)に達する事実が暴露されました。これを機に、同国では株式市場に上場する企業の役員報酬公開を義務付ける法律が成立しています。

 イギリスでは、二〇〇二年に通信大手ボーダフォンが赤字で株価も最安値近くに下落した時点で、CEOのゲント氏の年給が百二十万ポンドで、ボーナスと企業買収の成功報酬を加えて計六百九十万ポンド(当時のレートで約十三億円)が支給されたことから、大きな論議が起きました。

 英労働組合会議(TUC)は昨年末、過去六年間に企業役員報酬の上昇率が一般労働者のそれを十七倍上回っていると指摘し、国民的な論議を呼びかけました。

 英メディアの報道によるとバーバー書記長は「企業トップの報酬とその他のわれわれの報酬の格差は年々広がっている。ふっくらとしたネコは数年前に太ったネコになり、いまでは危険なまでに肥満したネコになっている」と怒りを表明しています。

大統領選前に

 フランスでも昨年、建設大手バンシのザシャリア前会長が退職金千三百万ユーロ(約二十億円)に加えて年二百万ユーロ(約三億円)の年金を受け取ることが明らかにされ、スキャンダルになりました。

 同国では数年来、実質賃金が停滞し、「購買力の引き上げ」が大統領選挙に向けた国民の最大の関心事になっています。経営者団体である仏企業運動(MEDEF)と民間大企業八十三社からなる仏私企業協会(AFEP)が今月九日、役員報酬に関する勧告を公表したのは、こうした背景からです。

 それによると、「企業の他の構成者」や「世論」の「反応を最大限考慮し」、「役員報酬は節度があり、バランスがとれ、公正であると同時に、企業内部の連帯と動機付け(やる気)を強めるものでなければならない」と指摘しています。


もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp