2007年1月24日(水)「しんぶん赤旗」

ILOのパート労働条約はなぜつくられたのですか?


 〈問い〉 ILOのパート労働条約とはどんなものですか? どんな経緯でつくられたのですか?(愛知・一読者)

 〈答え〉 国際労働機関(ILO)の条約と勧告は、パート労働者を含めすべての労働者を適用対象にしています。ILOが1994年にパート労働条約を採択した理由は、年々増大するパート労働者が低賃金という劣悪な労働条件の下で働いていることを憂慮したからでした。それ以前には、パート労働に関する国際基準が確立しておらず、ドイツなど一部のEU諸国でパート労働者の均等待遇が実現しているだけでした。

 パート労働条約が採択されて以降、EUパート労働指令が97年に採択され、パート労働者の保護はEU諸国に広がり、確立するにいたりました。なお、日本政府は、パート労働条約の採択を棄権し、いまだに批准していません。

 条約は、労働時間が短いことを理由に労働者を差別してはならないという大切な原則を確立しています。条約が定義するパート労働者とは、フルタイム労働者と比べて、通常の労働時間が短い労働者のことであり、雇用契約が期間の定めのない契約であるか有期契約であるか、つまり常用雇用であるか臨時・季節・日々雇いかどうかをいっさい問題にしていません。通常の労働時間が短い労働者全員に適用される条約になっています。とりわけ、パート労働者の圧倒的多数が女性であり、家族的責任を果たすためにパート労働を選択せざるをえない現実を重視した措置を盛り込んでいます。

 条約は、重要な労働条件について、フルタイム労働者と同等の権利を保障しています。(1)団結権と団体交渉権、職業上の安全と健康を保障し、雇用と職業で差別してはならない、(2)フルタイム労働者の基本賃金(時間あたりの賃金)より低くしてはならない、(3)労働時間、拠出金、所得に比例した社会保障をあたえる、(4)母性保護、解雇、有給休暇、有給の公休日、病気休暇について同等の条件をあたえる―などです。また、パート労働を強制してはならず、フルタイムからパートへ、パートからフルタイムへの自由な転換を保障することも定めています。

 こうした保護規定がEU指令に盛り込まれ、EU各国はそれを国内法で具体化し、パート労働者の均等待遇を確立しています。

 これに対して、日本のパート労働法がパート労働者の権利を定めず、行政指導のための法律にすぎないことを考えると、日本の立ち遅れはきわだっています。日本政府のこの立ち遅れは、パート労働条約を討議・採択した93年と94年のILO総会でも顕著でした。日本政府は、パート労働条約のほとんどの条項に反対し、修正案を提出して、条約を骨抜きにする先頭に立ちました。労働者側だけでなくEU諸国政府からも、ときには使用者側と米国政府からも反対され、日本政府の主張は完全に孤立していました。(筒)

 〔2007・1・24(水)〕


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