2007年1月18日(木)「しんぶん赤旗」

日銀利上げ Q&A


 日本銀行が、昨年七月の「ゼロ金利」解除後初の追加利上げに踏み切るかどうかが注目されています。この問題をどうみるのか、経済とくらしにどのような影響をもたらすのか考えてみました。(矢守一英)


なぜいま利上げ検討?

超低金利の矛盾は限界

 日銀が利上げを決定すれば、政策金利(短期金利=無担保コール翌日物)の誘導目標を現行の0・25%前後から0・5%前後に引き上げられる見通しです。「異常な政策」と日銀自身も認めてきた「ゼロ金利」の解除から六カ月。超低金利の状態からさらに一歩踏み出すかどうか。

 日銀が利上げを検討する前提には「景気は緩やかな拡大を続けている」という認識があります。景気の拡大がやがては企業部門から家計部門に波及するという楽観的な見方も示しています。

 しかし実態はどうか。景気が拡大しているのは一部の大企業だけです。中小企業や地方経済の回復は遅れています。雇用不安に加え、社会保障の連続負担増や増税に痛めつけられている家計にもその実感はありません。

 二〇〇〇年からの五年で、企業のもうけを表す経常利益は大幅な伸びを示すなかで、労働者の収入(雇用者報酬)は下降の一途。日銀の生活意識アンケート調査(昨年十二月)でも45%の人が景気が悪いと答えています。

 雇用と社会保障の不安の解消なしには、家計は元気になりません。「景気対策」をもっぱら金融政策にだけ絞り、異常な超低金利政策を続けてきた自民党政治の矛盾があらわれています。

くらし・経済への影響は?

銀行利用者に配慮必要

 短期金利の変動に合わせて上下するのが預金金利です。昨年七月の「ゼロ金利」解除時も、大手銀行は直後からいっせいに、普通預金金利を年0・001%から、年0・1%に引き上げました。

 長く続いた日銀の超低金利政策のもとで、庶民が奪われた金利収入は三百兆円にものぼります。それと比べれば、まだまだ「焼け石に水」の収入増です。

 一方で銀行の住宅ローンの引き上げや中小企業向け貸出金利の上昇による負担増の影響は少なくありません。

 民間の調査機関、帝国データバンクの企業意識調査では、全国一万社の企業のうち六割以上が「時期尚早」と回答。「一部の地域を除き、利上げに耐える力がない」(北海道、土木工事)といった懸念も示されています。

 金利上昇が収益の追い風になるのが金融機関です。貸出金利の上昇や市場での資金運用益などによる収益拡大が見込まれ、預金金利引き上げによる負担増を吸収するかたちになります。

 中でも大手銀行は三月期決算で空前のもうけをあげることが確実とされています。銀行には預金者への還元とともに、住宅ローンなど貸出金利の据え置きといった利用者への配慮が求められます。

政府・与党の反対の事情は?

「景気回復」に自信なし

 日銀の追加利上げをめぐり政府・与党内では、容認論の一方で反対論が噴出しています。

 「先月から今月に政策変更が必要なほど景気が良くなったとは考えていない」。自民党の中川秀直幹事長は十六日、こうのべて日銀の動きをけん制。政府が日銀の議決延期を求める「議決延期請求権」の行使もちらつかせています。

 甘利明経済産業相も「現状は日本経済の足腰をしっかりさせていく過程にある」と慎重姿勢を示しました。

 政府・与党が利上げに否定的な態度を示す根底には、景気の回復を胸を張っていえない自信のなさ、弱さが表れています。大量の国債(国の借金)を発行している政府にとって、金利が引き上げられることは、利払い負担が膨らむことになり歓迎できないというウラ事情もあります。

 政府内では「企業から家計への波及に遅れがある」(内閣府幹部)として足元の個人消費の弱さを背景にした慎重論が広がっているといいます。

 大企業の大もうけのために雇用を破壊し、庶民に次つぎと負担増を求める政策はやめ、家計を温める政策への転換こそが求められています。


 利上げ 一般的に、金利は景気が良くなるとお金の流れを締めるために上昇、景気が悪くなるとお金の流れを緩くしようと下がります。こうした金融の調節を行っているのが日銀です。日銀は銀行などが短期の資金を取引する市場の代表的な金利である「無担保コール翌日物金利」を、政策金利として0・25%程度に誘導するように政策運営しています。目標に沿って市場に資金を供給したり吸い上げたりすることで金利を調節しています。昨年七月まではこの政策金利を0%に抑える「ゼロ金利」政策をとってきました。

グラフ

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