日本共産党

2003年1月7日(火)「しんぶん赤旗」

主張

芸術・文化活動

権利として支える政治を


 映画「千と千尋の神隠し」が海外コンクールで大きな評価を受けるなど、日本の芸術・文化に海外からも注目が集まりました。人びとに生きる意味を問いかけ、勇気と明日への希望を与える――。そうした芸術・文化が今ほど求められているときはありません。

基本法の精神生かし

 しかし、長引く不況が芸術・文化活動を直撃し、民間劇場や映画の撮影所の閉鎖・縮小のニュースが相次ぎました。社会保障の改悪による生活不安や高い失業率、長時間労働――小泉政権の下で国民が気軽に文化を楽しむ条件も厳しくなっています。芸術・文化の創造と享受の基盤が崩れつつあるのも現実です。

 日本の芸術・文化が自由に発展するために、政治はどう応援していくのか、芸術・文化活動と政治の役割が大きくクローズアップされるようになっています。

 大きな転機になったのは、文化芸術振興基本法が制定されたことです。あれから一年がたちました。法律は、芸術・文化を創造し享受することが国民の権利であることを記しました。二十一世紀の日本と人びとにとって芸術・文化が、教育や福祉と同じようになくてはならないものとして位置づけられ、国・地方に条件整備をすすめる責務を課しました。

 振興基本法の精神を生かし、すべての国民が権利として、芸術・文化を自由に楽しめる、新たな支援を充実させる政治の転換が必要です。

 振興基本法の制定を受け、この一年、芸術・文化団体からは、「すべての子どもに最低年一回、生の舞台芸術が鑑賞できるように」「民間の劇場への支援を」など、現実の困難の解消を求め、日本の芸術・文化の発展を真剣に模索する、具体的な要望・提言が出されてきました。

 これらは、芸術・文化活動の発展と行政の役割を考えるうえで、大きな財産となっており、政治の側が真摯にこたえるかが問われています。こうしたなか、四十年来にわたって続いた芸能法人への差別的な税制の撤廃に政府が踏み出すなど、文化行政の転機につながる動きも生まれました。

 昨年末に発表された文化庁予算案や、文化行政の「基本方針」をみるかぎり、目につくのは、国が「トップレベル」と認定する団体への重点支援や、大型の文化施設の建設など、従来型の支援策ばかりです。逆に、幅広い団体への支援を担う日本芸術文化振興会への助成は削減されようとしています。これでは、国民すべての文化的権利を保障するという振興基本法の精神を生かしたものとはいえません。

 国民の身近な芸術・文化の振興の点では、地方自治体の役割が重要です。地方では、廃校となった学校の利用や公立施設の改修で、文化団体や若者が集い、練習する場をつくっている例や、住民の活動の拠点となるような文化施設の運営をめざすなど、新しい試みも始まっています。

大切な自治体の役割

 しかし、全体として地方の文化予算は、年々削減される一方です。地方自治体の芸術文化経費は、九三年には八千億円に達しましたが、二〇〇〇年度には五千二百七十億円まで減っています。芸術・文化団体への支援や芸術・文化事業の経費は、九四年の九百八十九億円から四百九十三億円へと半減しています。

 振興基本法を生かすとりくみはこれからが本番です。いっせい地方選挙でも、芸術・文化を大切にする新しい政治の流れを刻むかどうかが問われてきます。


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