日本共産党

2002年12月22日(日)「しんぶん赤旗」

地域に根ざす 教育学部残して

国立大の統廃合問題 群馬大にみる


 いま、全国各地で地域住民や教育関係者らが「教育学部を残す会」などを結成し、大規模な署名や請願活動を展開しています。それには、大学人も呼応し、かつてない広がりがみられます。埼玉大学との統合問題で揺れる群馬大学教育学部(学生数九百八十三人)のある前橋市で取材しました。浅尾大輔記者

教育への熱情が20万人の署名に

 群馬に教育学部を残す会は二日、十九万人をこえる署名を小寺弘之知事に手渡しました(現在、二十万人を突破)。

 坂西輝雄代表(元県教育長)が「署名運動で、県民の教育への熱情を感じた。その願いを伝えたい」とのべると、同席した人たちも「群大にお世話になっている。地域のなかに生きる教育を残して」(付属校園の父母)、「教育学部がなくなると、群馬の教育振興に憂いが生じる」(元県教育長)と訴えました。

寒風の吹く繁華街で署名を訴える「残す会」の人たち=11月23日、前橋市

 翌三日には、群馬大学教育学部の教員有志が記者会見し、「群馬県に教育学部キャンパスを残すことを求める」との異例の声明を発表。同学部教員の三分の二にあたる六十九人が賛同しました。

 代表の中野尚彦教授は、「われわれが、沈黙を続けるわけにはいかない」とのべ、「学長は、声明を正確に理解し、大学改革の必要条件にしてほしい」と訴えました。

 「残す会」の要請に、小寺知事は「(大学側が)教育学部の廃止というのは、唐突」と表明。県の強い要請で、群馬大学と埼玉大学の統合に向けた十二月の協議は、延期となっています。

 事態の推移を見守ってきた同大教職員組合は十三日、教育学部の埼玉大学への統合の再考を求める声明を発表し、学長に送りました。

住民、大学人ら広がる運動

日本共産党県議団も力あわせ

多くの県民と太いきずなで

 十九万人の署名を集めた「残す会」が、同窓会や校長会、PTAなど二十五団体で結成されたのは、約二カ月前。教員有志の声明もわずか一週間という短期間での取り組みでした。

 「群大が実践してきた教育が、地域密着型で、多くの県民と太いきずなで結ばれている証拠」

 「残す会」事務局長で校長経験者の剱持平三郎さんはこうのべ、今年五十周年を迎えた「理科研究発表会」の活動をあげます。

 発表会は、毎年十一月に群馬大学教育学部校舎を使い、県内の小中高生が、「川の生態研究」など郷土に密着した科学研究を発表するもの。今年も、父母ら合わせて約千人が参加しました。

 「大学と卒業生である現場の教師が、父母と連携し、群馬の科学教育を全国でも高いレベルへ引き上げてきた、まさに”県民運動”です。教育学部がなくなれば、県のキャッチフレーズ『子どもを育てるなら群馬県』の土台を失うことになる」

 教育学部の教員声明の代表をつとめる中野教授は、大学の近くの借家で、障害をもつ地域の子どもの教育と相談活動をおこなっています。

 「うちの学部には、ほかにも自閉症児の治療教育に携わる学生サークル『たんぽぽ』や教育学部の校舎で肢体不自由児の動作訓練をする学会、スポーツで子どもの教育に取り組む地域活動など、たくさんあるんですよ」

 教師志望の女子学生は「母校を失いたくない。先生が頑張ってくれてうれしい」といいます。

元県教育長とも一点での共同で

 日本共産党の群馬県議団は、いち早く九月議会で「群大教育学部をなくすな」と質問し、「県は、統合に合意した経緯はない」との答弁を引き出しました。また、「残す会」と協力して署名を集めてきました。

「残す会」と懇談する林紀子参院議員(左から三人目)と党県委員会=11月18日、群馬県庁

 十一月十八日には、群馬大学出身の林紀子参院議員が、教育学部長や教職員組合、「残す会」などと懇談。「残す会」の坂西代表は、「われわれは、いかなるイデオロギーもこえて、教育学部を守れの一点で多くの方々にバックアップを訴えてきた。林先生が『全面的に協力する』と率直にいわれて、ありがたく思いました」と振り返ります。

 懇談に同行した大川正治党群馬県委員長はいいます。

 「元県教育長の坂西さんとは、実は、県議会で論戦してきた仲なんですが、『群馬の教育の灯を消すな』で一致して共同できるんですね。これは、いきづまった小泉政権の文教政策の深刻な矛盾のあらわれでしょう。今後も手を取り合い、幅広く運動をすすめたい」

 十二月県議会は十八日、「残す会」が提出した群馬大学教育学部の存続を求める請願を採択し、政府に慎重対応を求める意見書を全会一致で採択しました。


教員養成系学部・大学を半減政府方針

 小泉内閣は、「大学構造改革」の一環として、昨年十一月、「教員養成課程の入学定員の減少」「交通網の発達」などを理由に、すべての都道府県に設置されている四十八の教員養成系学部・大学を統廃合し、半分にする計画を発表しました。

 群馬のほか、北海道、青森、岩手、山形、福島、栃木、福井、奈良、山口、ジ賀、香川、高知などで「地域の教育学部を守れ」の運動が起こっています。

 教育学部の統合を決めたのは、島根大と鳥取大の一組だけです。「平成十四年度中に再編・統合計画を策定する」としていた文部科学省の計画は予定どおりにはすすんでいません。


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