日本共産党

2002年12月16日(月)「しんぶん赤旗」

“米国の横暴に沈黙しない”

れき殺米兵無罪判決 立ち上がった韓国の若者

地位協定改定を要求


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「地位協定改定は韓米協力を促進する」と書いたプラカードを手に平和行進に参加した若者=14日、ソウル

 在韓米軍の装甲車に二人の女子中学生がれき殺され、米軍事法廷が米兵二人に無罪を言い渡した事件が、韓国政治と米韓関係を揺るがしています。十四日、韓国・ソウル都心で開かれた「主権回復の日、国民平和大行進」に、約十万人の若者が集結。追悼のろうそくを手に、「ブッシュ(米大統領)は韓国国民に謝罪せよ」と叫びながら米大使館に向かう行進は、”政治に無関心”と言われた若者像とはまったく違う姿でした。(ソウルで面川誠 写真も)

ソウルで10万人行進

 なんの罪もない女子中学生の命を奪った米兵が、なぜ無罪なのか―。「被害者がいるのに加害者がいない? こんなに韓国人をばかにした判決があるか」。米国の横暴が、はっきりと目の前に現れ、韓国国民の怒りに火をつけました。

 ブッシュ米大統領が北朝鮮を「悪の枢軸」と決めつけて朝鮮半島に緊張が走った今年二月、韓国各地でブッシュ訪韓反対集会が開かれたとき、若者の姿は多くありませんでした。まだ、自分たちの日常とは距離のある問題だったのです。

 申考順、沈美善という二人の女子中学生の死と無罪判決は、米国のごう慢と横暴を若い世代の日常生活に持ち込みました。自分の妹や友人かもしれない少女の無残な死。米兵を韓国の裁判所で裁けない在韓米軍地位協定。遺族と親友たちの悲しみを鼻で笑うかのような米軍事法廷の無罪判決。

容赦ない怒り

 若者は素早く反応しました。無罪判決後、連日続く「ろうそくデモ」を初めて提案したキム・ギボさんは、平和大行進でこう語りました。「米国のやりたい放題に韓国はなにもできない、という無力感に襲われました。そこでインターネットを通じて、米大使館に抗議するろうそくデモを呼びかけたのです。みんな同じ気持ちだったのでしょう。私たちは、屈辱に沈黙するのではなく、立ち上がる勇気を互いに与え合いながら、ここにいるのです」

 ほとんどの参加者は、初めて集会やデモに来たと言う若者たち。怒りに満ちたシュプレヒコールでした。「ヤンキー・ゴー・ホーム」、「くたばれUSA」など激しい叫び声も飛び交います。米国歌手のCDをたくさん聴いて、休日には米国の映画も楽しむ若者たちですが、現実の米国政府の姿に容赦ない怒りをぶつけます。

 平和大行進を主催した「米軍装甲車による申考順、沈美善殺人事件、汎国民対策委員会」の李勝憲さんは、「排他的な反米行動とは違う」と強調します。「私たちは、この運動を”反米闘争”と表現していますが、目標がはっきりしています。ブッシュ大統領が韓国国民に謝罪すること、公務中の米兵犯罪のうち重大なものは韓国側が司法権を行使できるよう在韓米軍地位協定を改定すること、この二つが核心です。対等な韓米関係こそが私たちの目標です」

友好国ならば

 参加者たちは、抗議行動を「無分別な反米行動」と批判する政府高官や保守マスコミを非難します。平和大行進で激励のあいさつをした人気歌手、シン・ヘチョル氏は、「私たちの行動を不純な政治勢力と決めつける人々がいます。言わせておこう。国民の良心は私たちとともにあるから」と声を張り上げました。

 沈美善さんの父親、沈洙輔さんは、「みんなが力を合わせて米兵を韓国で裁けるようにしてほしい。米国が本当の友好国なら、韓国が主権国家であることを尊重すべきでしょう」と訴えました。


 女子中学生れき殺事件 六月十三日、京畿道坡州郡の農村で、米第二師団所属の工兵隊が公道で移動訓練中に、通行中の女子中学生二人を背後かられき殺した事件。米軍事法廷は、米兵二人を業務上過失致死容疑で起訴しましたが、十一月末に相次いで無罪判決を下しました。


悲しみと国民の自尊心わかってほしい

亡くなった沈美善さんの父沈洙輔さん

 亡くなった沈美善さんの父親・沈洙輔さん(47)に、十四日の国民平和大行進会場で現在の心境を聞きました。(ソウルで面川誠)

 娘を失ったときは、胸が引き裂かれるような、言葉で言い表せない心情でした。残された家族を守るために、あまり騒ぎ立てないほうがいいのではないかと思い、かなり自制したのですが、無罪判決が出たことでがまんできなくなりました。子どもを失った悲しみだけではなく、韓国国民の自尊心が崩れるような気がして胸が痛みます。

 まさか無罪が出るとは、考えもしませんでした。人を殺して無罪判決なんて話になりません。米軍は最初から真相を究明する気はなかったとしか思えません。現場の状況を隠そうとし、私たちの目を避けようとばかりしました。

 米国は韓国の友好国だといいますが、友好国だというなら、韓国人も人間として同じ価値を持つことを尊重すべきでしょう。米兵も韓国人も、平等な条件でいっしょに生活できなければならないでしょう。あまりにも不平等で不公正です。公務中の事件だという理由で米兵を裁けない在韓米軍地位協定は絶対に、この機会に改定してほしいと望んでいます。

 今は、韓国国民が力を合わせるときです。主権を回復するときです。それは不平等な地位協定を改定することです。こんなに多くの人々が娘を愛して、私たちといっしょにいてくれることに感謝します。


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