日本共産党

2002年11月28日(木)「しんぶん赤旗」

竹中金融相が“参考にせよ”という

不良債権処理加速

韓国はどうなっているか


 竹中平蔵金融・経済財政担当相が「不良債権加速策」で、しきりに「韓国を参考にすべきだ」と発言しています。その韓国で何が起こったのかをみました。(今田真人記者)


GDP比約30%の公的資金を投入

 韓国では一九九七年のアジア通貨危機や財閥の相次ぐ破たんで、銀行の不良債権が膨らみ、いわゆる「金融危機」が発生しました。韓国政府は、この不良債権を大規模な公的資金を使って処理しました。

 このときの不良債権処理策を詳しくリポートしている日銀の個人名論文「韓国の金融改革について――改革の概要と日本との比較」(今年十月発表)によると、その公的資金の額は、一九九八年から二〇〇一年までの約四年間で、韓国の国内総生産(GDP)比約30%の百五十五兆ウォン(約十五兆円)にのぼりました。

 その公的資金の内訳は、資本注入・贈与がGDP比14%、不良債権買い取りが同7%、預金者保護が同5%といいます。

 日本の公的資金投入額は二十九兆円(二〇〇一年度末)で、GDP比6%。もし、日本が韓国並みに公的資金を投入すれば、二十九兆円の五倍の百四十五兆円になります。日本の今年度政府予算が八十一兆円ですから、それがどんなに異常な手段かがわかります。

7行が国有化 主要5行が欧米支配下に

 この公的資金も使って、韓国政府が不良債権を処理した結果は、銀行の国有化などによる銀行再編と銀行数の減少、欧米資本を中心とする外資導入とその銀行支配の急拡大です。

 一九九八年から二〇〇〇年にかけて国有化された銀行(地方銀行を含む商業銀行)は、慶南、光州、ハンビット、平和、済洲、ソウル、第一の七行。この国有化された銀行を含む金融再編で、商業銀行は、一九九七年の二十六行から二〇〇二年九月末現在の十三行に半減しました。

 また、再編後の主要銀行九行の外国人持株比率をみると、五行が過半数となり、欧米金融資本の支配下になっています(表)。

 その典型的な事例は、第一銀行で、一九九八年一月に国有化されたあと、一九九九年九月に米国のニューブリッジキャピタルに売却されました。

 さらに、欧米金融資本の支配下にない残りの主要銀行四行も、公的資金投入で政府持株比率が高く、今後、外資に売却されるおそれも出ています。そうなれば、韓国の主要銀行のほとんどが外資系になります。すでに、朝興銀行(政府持株比率80・1%)の買い取りには、日本の新生銀行(米国のリップルウッド支配下の銀行)が名乗りをあげているといわれます。ソウル銀行は今年十二月に外資支配下のハナ銀行への売却が決まっています。

米国主導の国際機関IMFの監督下で

 ところで、竹中金融相が触れたがらない、韓国の不良債権処理の最大の特徴は、IMF(国際通貨基金)の監督下で進められたという事実です。

 韓国政府は一九九七年十二月、IMFから総額五百五十億ドルの救済融資を受ける条件として、IMFが提示する「経済改革計画」を受け入れました。

 その内容は、国の関与で不良債権処理を加速させることですが、その条件として「これらの計画作成は、IMFの担当者との協議が必要である」(同計画概要)と明記。それとともに、同計画は、それまで国内産業保護のために厳しく規制されていた外資導入について、大幅な規制緩和を迫る項目も含まれていました。

 IMFは、米国政府の発言権が極めて大きい、いわば米国主導の国際機関です。欧米金融資本に支配された現在の韓国の銀行業界の現状は、米国がIMFを使って自国の金融資本の外国支配を進めた結果ともいえます。

 竹中金融相がいう「不良債権処理加速策」は、銀行業界はじめ国内では大変不評ですが、米国政府関係者だけは、露骨に全面支持を表明しています。

 韓国の事例を持ち上げる竹中金融相の立場が、だれの利益を代弁するものなのかが浮かびあがっています。

 


もどる

機能しない場合は、ブラウザの「戻る」ボタンを利用してください。


著作権 : 日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 Mail:info@jcp.or.jp