日本共産党

2002年11月17日(日)「しんぶん赤旗」

国保証のとりあげ

制裁強化は社会保障に逆行

受診ためらい死亡例も


 国保証を取り上げられ、資格証明書になると、窓口でいったん医療費全額を支払わなければなりません。このため、病院にいくのをためらい治療が遅れ死亡するという悲惨な例が相次いでいます。

 一昨年末、静岡県清水市の男性、昨年四月に北九州市で三十二歳の女性、札幌市で昨年十月に五十代の男性、今年二月には胃がんで五十三歳の男性がそれぞれ死亡しました。いずれも被保険者資格証明書を交付されていた人で、病院へいくのをためらっていて治療が遅れたためです。

 保険料(税)の収納率アップのために、国保証を取り上げるという制裁措置は、医療、社会保障では絶対に許されないことで、実際にこのために死亡する例が起きているのです。

払いたくても払えない状況

 今回の調査は六月一日時点であり、実際に今年度の保険料(税)額が決まり各世帯に通知されたのはこの後の六月下旬ごろ。この時、保険料(税)額がさらに上がり支払えない世帯が増え、資格証明書発行世帯はさらに増えているものとみられます。

 全国生活と健康を守る会連合会の島田務会長は「保険料を払いたくても払えない状況のなかで、国保証を取り上げられているのが実態。制裁措置は社会保障制度と相いれないものであり、制裁措置はやめるべきだ」と力説します。

深刻な不況と高い保険料

 保険料のために借金を重ね、なんとか保険料を納めるが、そのうちに短期証になり、借金でもやりくり出来なくなり、国保証をとりあげられ資格証明書を交付される…。こうしたケースが多いと、島田会長はいいます。

 国保証取り上げなどの制裁が増えている原因は深刻の度を増している不況と、年々増える保険料(税)額です。

 保険料(税)が引き上げられるきっかけになったのは、八四年に国庫補助率を45%から38・5%に引き下げたことです。また九五年の改悪で、保険料(税)の決め方も、世帯ごと、世帯人数ごとの応益割の比重を大きくする「平準化」を市町村に押しつけることによって、低所得者と高収入世帯との保険料の差を小さくし、低所得者に負担の重い制度にしました。

 日本共産党は国会でも地方議会でも、制度の改悪に反対し、国保を国民の医療を守る制度にするよう主張、保険証取り上げをすべきでないと要求してきました。

 井上美代参院議員は、九九年三月の参院国民福祉委員会でこの問題を追及。厚生省は国保証取り上げについて、支払い能力があるにもかかわらず滞納し、相談にも応じない悪質滞納者が対象で、滞納者から一律に取り上げるものではないと答弁しました。

 今年三月の参院厚生労働委員会では、小池晃議員の質問に坂口力厚生労働相は、保険証を取り上げるかどうかは「自治体の判断である」とのべました。

 いま国保制度を国民医療を守るうえからも、抜本改善することが求められています。

 あわせて、保険者である自治体が努力して、住民医療を守ることが必要です。

 国保証取り上げについて「災害その他の政令で定める特別の事情があると認められる場合」(別項)には適用しないとされています。「払いたくても払えない」と特別の事情を訴え、国保証取り上げを許さない運動や、保険料(税)減免運動などが各地に広がっています。各自治体も住民の実態と要求にこたえ財政支出を増額するなど、自治体としての責務を果たすことがいっそう重要になっています。

(鈴木進一記者)


 「特別の事情」(1)世帯主がその財産につき災害を受け、または盗難にかかったこと(2)世帯主またはその者と生計を一にする親族が病気にかかり、または負傷したこと(3)世帯主がその事業を廃止し、または休止したこと(4)世帯主がその事業につき著しい損失を受けたこと(5)前各号に類する事由があったこと

都道府県別資格証明書・短期被保険者交付世帯数
(2002年6月1日現在)
 滞納世帯数資格証明書短期被保健者証
北海道190,55016,07543,199
青森52,3071,9819,314
岩手36,0077148,307
宮城86,8569437,508
秋田24,5518874,159
山形23,6025893,253
福島58,1282,0465,875
茨城104,5994,84627,913
栃木71,2709,10211,480
群馬58,3787,9819,606
埼玉229,0304,24520,971
千葉230,81522,57569,476
東京615,2775,51266,588
神奈川291,26623,74562,701
新潟48,5652,0695,210
富山15,0921,0701,539
石川25,0376144,737
福井17,5112,2143,513
山梨27,3855075,956
長野48,7712768,070
岐阜54,1346,27210,179
静岡118,6747,74214,884
愛知193,8613,53531,237
三重52,2087,5864,942
滋賀31,0881,1096,373
京都68,2864,30817,373
大阪383,41411,86362,317
兵庫171,5176,27334,535
奈良34,9743327,662
和歌山29,8214,5148,018
鳥取12,8331,1174,399
島根12,9289131,934
岡山51,2258573,648
広島79,33210,67715,745
山口39,9651,0303,990
徳島16,3908922,727
香川20,2201,3786,528
愛媛35,2052,87410,225
高知24,0562,6288,441
福岡137,51928,16139,692
佐賀23,4961,5335,753
長崎48,1002,25518,433
熊本53,7471,06228,813
大分35,9372,5289,293
宮崎42,6471,5458,172
鹿児島22,5624,42516,737
沖縄67,4405516,539
合計4,116,576225,454777,964
(厚生労働省調べ)

 


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