日本共産党

2002年11月7日(木)「しんぶん赤旗」

そもそも けいざい ワールド

失業給付の内容を変えるって?


 「政府が失業給付の内容を変えるんだって?」――。親類の集まりで甥(おい)の耕治君がこう話しかけてきました。社会人になって五年目の会社員です。「審議会に厚生労働省が案を出した。それがひどい内容でね」と私。もっと聞きたいというので、帰り道の喫茶店で話を続けました。(篠田隆記者)


給付減らし、負担重く

 耕治君 雇用悪化なのに改悪なの? 

 記者 負担と給付、両面から改悪だ。失業者に出す手当(給付)を五千五百億円減らし、労働者などから徴収する保険料(負担)は三千億円重くする。合わせて国民には年間八千五百億円のマイナスだ。

 耕治君 “給付は軽く負担は重く”ですか? 

 記者 負担では、昨年四月に月額賃金の0・8%だった保険料を1・2%にした。それを先月から1・4%にしたばかりだが、五日の審議会に厚労省は、来年度に1・6%にする案を出した。二年で二倍化だ。

 耕治君 ひどいなー。

 記者 君の月額賃金はいくらかな。

 耕治君 二十・七万円ですが…。

 記者 失業給付の保険料は労使折半だから、君の負担は十月から0・7%、月千四百五十円ぐらいになったはずだ。それが0・8%だと千六百五十円。昨年三月までの八百三十円からは倍増だ。

日額上限は24%下げ

日額給付率が縮小
  (現行)   (改定)
60歳未満 60%〜80%→50%〜80%
60〜64歳 50%〜80%→45%〜80%
日額上限が減額
30歳未満 8676円→6580円(▲24%)
30〜44歳 9642円→7310円(▲24%)
45〜59歳 10608円→8040円(▲24%)
60〜64歳 9640円→7011円(▲27%)
教育訓練給付が半分に
訓練費用 8割支給→ 4割支給

 耕治君 給付はどうなるんですか? 

 記者 給付は日額いくらで、それが何日もらえるかが問題になる。失業直前の半年間の賃金(一時金含まず)を日割りし、その60〜80%(六十歳以上は50〜80%)が現在の給付日額だ。これを50〜80%(同45〜80%)にする。80%はパートなど低賃金の人だ。

 耕治君 私の賃金は一日六千九百円です。

 記者 そうすると君の給付日額は四千八百九十九円から四千八百二十五円に百円程度減額だ。そのくらいならと思っちゃだめ。日額で千円以上違ってくる人もいる。しかも日額上限を24%以上切り下げる。どんなに保険料を払っていても限度額以上はもらえない。

低い方に合わせる

給付日数の変化
      被保険者期間    
  1年未満 1年以上
5年未満
1年以上
5年未満
1年以上
5年未満
20年以上
○一般離職者
 全年齢
90日 90日 120日→90日 150日→120日 180日→150日
○倒産・解雇離職者          
 30歳未満 90日 90日 120日 180日 ――
 30歳以上45歳未満 90日 90日 180日 210日 240日
※35歳以上45歳未満 90日 90日 180日 210日→240日 240日→270日
 45歳以上60歳未満 90日 180日 240日 270日 330日
 60歳以上65歳未満 90日 150日 180日 210日 240日
注)→は改定、※は新設。一般離職者とは倒産・解雇による離職以外の人

 耕治君 日数はどうなるの? 

 記者 この点では昨年四月から制度がおおきく変わった。

 耕治君 え! 知らなかったな。

 記者 リストラや倒産で失業した人と、定年や自主退職した人とを給付日数で差別化した。倒産・リストラ失業者に手厚くすると政府はいったが実際は支出削減が狙いだ。だから手厚くといっても最大で三十日支給をのばしただけ。定年失業者などは大幅に日数減だ。こんどの案ではさらに短縮し、パートの人と同じにする。

 耕治君 フルタイム労働者とパート労働者の格差是正は当然です。でも、低い方に合わせるのは問題だ。

 記者 昨年三月までなら三百日もらえた定年失業者が、四月からは百八十日、今回の案では百五十日。かつての半分になる。

 耕治君 それじゃ、“負担は倍、給付は半分”じゃないか。

再就職が難しいのに

失業手当の給付見直し例(試算)
現行制度と政府改定案の比較
    日額 日数 総額 差額
Aさん・27歳・自主退職 (現行) 4899円 120日 58.8万円  
(勤続5年、賃金月額20.7万円) (改定) 4825円 90日 43.4万円 ▲15.4万円
Bさん・44歳・会社都合退職 (現行) 7800円 210日 163.8万円  
(勤続18年、賃金月額39.0万円) (改定) 6500円 240日 156.0万円 ▲ 7.8万円
Cさん・59歳・会社都合退職 (現行) 9780円 330日 322.7万円  
(勤続31年、賃金月額48.9万円) (改定) 8040円 330日 265.3万円 ▲57.4万円
Dさん・62歳・定年退職 (現行) 6064円 150日 91.0万円  
(勤続14年、賃金月額25.2万円) (改定) 4993円 120日 120日 ▲31.1万円
注(1)・厚生労働省作成の日額見直しモデルなどを元に試算。
注(2)・「会社都合退職」は解雇・倒産などによるもの。賃金月額は退職前6カ月の平均賃金で一時金は含まず。
勤続年数はそのまま雇用保険被保険者期間であったと仮定。▲はマイナス

 記者 耕治君が自主退職で失業したとする。百二十日だった給付日数は九十日になる。日額も減るから総額十五・四万円の減額だ。

 耕治君 それはキツイ。不況で就職難だ。九十日で再就職できるかな。ローンをかかえている人は給付減で返済計画は狂う…。

 記者 厚労省は「いつまでも給付していると早く再就職しない」「再就職の賃金は低いので、給付日額が高いと早く再就職しない」という理屈だ。

 耕治君 それは「へ理屈」だなあ。

 記者 完全失業者の30%は一年以上の失業だ。無収入の人は50%もいる。給付受給者は二割にすぎない。その二割の人さえ政府は、早く給付から外そうとしているんだ。

 耕治君 小泉内閣はセーフティーネットを強化するというけど、これじゃ逆だね。

 記者 日本共産党は、給付期間を一年間にする、家庭と家族を維持する制度を創設するなど緊急の対策を求めているが、必要だね。

 耕治君 共産党に期待します。


 雇用保険の失業給付制度 人を雇う人(企業)は労働者を被保険者にしなければなりません。被保険者なら、保険加入期間と年齢で格差はありますが、パート労働者でも失業給付をうけられます。政府が管掌し、労働者と使用者が折半で負担する保険料と、給付総額の四分の一から三分の一の国庫負担でまかなっています。

 


もどる

機能しない場合は、ブラウザの「戻る」ボタンを利用してください。


著作権 : 日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 Mail:info@jcp.or.jp