日本共産党

2002年10月20日(日)「しんぶん赤旗」

どうなってるの?――…

原発の安全検査


 原子力発電所の相次ぐ損傷隠しで、その安全を確認する国のチェックシステムが大きく揺らいでいます。国の検査体制そのものに疑問がもたれています…。

どういう検査が

原発施設検査は、国の定期検査(定検)と、電力会社による自主点検の二つです
写真
中部電力浜岡原子力発電所

 △定期検査

 定検は、電気事業法第五四条にもとづき、十三カ月に一度実施します。運転を停止して原発施設が技術基準に適合しているかどうか確認します。経済産業省原子力安全・保安院の電気工作物検査官(本省四十人、地方局四十人)が、原発に出向き「立会検査」や「記録確認検査」を実施します。

 検査対象は、原子炉本体など安全確保上重要な設備に関する約百五十項目にのぼります。そのうち構造や強度にかかわる六十項目を、財団法人「発電設備技術検査協会」が立ち会い検査を行い、国の検査官が記録を確認しています。

 △自主点検

 一方、電力会社は定検実施時期に合わせ、定検対象外の設備を自主点検します。点検結果の報告は、原子炉等規制法などによって、原子炉の運転に支障を及ぼす故障があったとき、に限られています。

 同保安院原子力発電検査課は、「定検は車でいう車検にあたり、自主点検は運転前点検などにあたる」と説明します。

 △保安検査

 定検、自主点検のほかに、運転状況や従業員の保安規定の順守状況を確認する、国の保安検査があります。四半期ごとに一回、三週間程度、原発施設近くに常駐する原子力安全・保安院の保安検査官(約百人)が、帳簿や書類を検査します。

検査の実際は

国の検査は、電力会社主導でメーカーいいなりが実態です
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 電力会社は、検査を日立製作所や東芝など原子炉メーカーに委託します。

 メーカーは予備的な検査を実施し、問題個所を電力会社に報告。国の検査官による「立会検査」は、問題個所を調整した後に行われます。「そうしないと立会検査は合格しません」(メーカー担当者)。

 例えば、百個あるバルブを、定検の時にすべて検査するわけではありません。日本電気協会の電気技術規定にもとづき、電力会社は、百個のバルブが十年で一通り検査できるような独自の計画を立てます。その計画をもとに国が検査要領を承認し、それに沿って定検が実施される仕組みです。電力会社が定検時に問題個所をさけることが可能なしくみとなっています。

 同保安院原子力発電検査課によると、定検を行う検査官は通常一人。出力九十万キロワット以上の原発には本省の検査官が、それ未満は、地方の経済産業局の検査官が出向きます。検査官が行う「立会検査」項目は、原子炉格納容器漏えい率検査など二十項目。同検査課は「『立会検査』の現状は試験結果が、基準値以内に入っているかをみるだけで精いっぱい」といいます。

 電力会社は、コスト削減を実現するため検査期間の短縮を進めています。以前は三カ月かかった検査期間は、今では発電停止から再開まで四十日前後です。これが重大事故につながる“温床”になっています。(別項に中部電力の例)

検査体制の問題は

電力各社の一連の損傷隠し事件は、現行の原発検査体制の無力さを浮き彫りにしました。事件は経済産業省原子力安全・保安院と電力会社、原子炉メーカーの癒着が背景にあります

 原子炉メーカーの一つである日立は福島第一原発4号機の中性子計測ハウジングの点検で、東電の求めで「異常なし」と、事実に反する報告書を作成。同社はメーカーとして、顧客の要望を断りきれなかったなどと弁明しています。

 こうした不正を監督する行政官庁に、電力会社や原子炉メーカーからの「天上がり」が五年間で四十五人にのぼることが分かっています。

 原子力安全委員会が置かれている内閣府にも、政策統括官(科学技術政策担当)付の「参事官(原子力担当)付」として電力会社から、同「参事官(原子力担当)付」には、日立からそれぞれ「任用」されています。

 逆に、旧通産省OBが東電など三電力会社の役員などに「天下り」している例もあります。

 定検の一部を委託されている、「発電設備技術検査協会」の役員にも、電力会社や原子炉メーカーの幹部が名をつらねています。

 官民の癒着にとどまらず、国の原子力行政自体が、規制機関である原子力安全・保安院と、原発立地推進機関である、経済産業省とが一体となっている異常な体制です。

安全性の確保には

官民癒着の要因である「天上がり」「天下り」を規制する必要があります。なによりも安全確保のための独立した規制機関を確立することが急務です

 原発を規制する保安院が、原発を推進する経済産業省の一部門となっていては、事故隠しもデータ改ざんも発見できず、調査も困難です。

 「原子力の安全に関する条約」でも原子力を推進する部門と規制する部門を分けることを定めています。

 米国やイギリスなどでは、国際原子力機関の勧告にもとづいて、規制機関と推進機関が行政庁単位で分離しています。独立した規制機関をただちに確立することが必要です。


定期検査の対象と実施時期

図

検査“手抜き”が事故の温床に

 中部電力は浜岡原発4号機の第6回定期検査(2001年度)で「29日定検を達成した」と誇っています(日本原子力学会誌、Vol.44、No.4)。その動機として「競争原理の導入」や「経営効率化」をあげています。

 しかし、その直後の01年11月には浜岡原発1号機で配管破断事故を引き起こしています。

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世界と日本の原発

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