日本共産党

2002年10月6日(日)「しんぶん赤旗」

事件リポート

ケータイ通話記録漏えい

創価大グループ(3人)犯罪の奥行き


NTT情報管理

モラル任せでいいか

図

 個人の携帯電話通話記録をNTTドコモ関連社員が自由に閲覧し、ある目的で、ひそかに持ち出したら…。怖い推理小説を連想させる携帯通話情報漏えい事件がこの九月に発覚しました。背景を追跡しました。

 事件で逮捕されたのは、NTTドコモ関連会社のドコモ・システムズ(NTTドコモ100%出資)社員の嘉村英二(26)、創価大学学生課副課長の根津丈伸(41)、同大嘱託職員で元警視庁職員の田島稔(39)の三容疑者。三人の容疑は電気通信事業法違反(通信の秘密の侵害)と窃盗、同教唆でした。警察の調べやNTTドコモによると、事件の概要は――。

 根津容疑者と嘉村容疑者は、以前からの知り合い。嘉村容疑者は、根津容疑者の依頼を受けて、出向していたNTTドコモ情報システム部(江東区)に管理されている通話記録を調査。田島容疑者の交際相手だった女性とその知人男性の携帯電話二回線分の通話記録を調べたうえ、料金明細票(三〜四月分)を印刷して持ち出し、根津容疑者らに渡しました。

2回線分だけか

 料金明細票に記録されているのは、通話先電話番号や通話時間など。田島容疑者は交際相手の女性を疑い、この明細票をもとに女性の知人の男性を問いただしました。不審に思ったこの男性がNTTドコモに調査を要求し、社内調査の結果、嘉村容疑者の犯行が浮かび上がったといいます。

 これは依頼した人物と依頼を受けた人物がいわば“仲間”だったから可能なことでした。

 実は、嘉村容疑者も創価大学出身者。一九九九年の卒業(二十五期)で、その年にドコモエンジニアリング(後にドコモシステムズに営業譲渡)に就職しました。嘉村、根津、田島の三人の容疑者は「創価大学」という共通項でしっかり結ばれていたのです。

 NTTドコモ広報部は「社内調査で突き止めたのは二回線分だけ。あとは警察の捜査の問題」とほかにも情報漏えいがある可能性を否定しません。不正な情報を引き出したのは嘉村容疑者だけの犯行かという疑問についても「コメントできない」との回答です。

 はたして情報を引き出したのは男女関係調査のための二回線分だけなのか。情報を漏えいされたのは二人だけなのか。三容疑者の共通の関心はそれだけなのか、わけても根津、嘉村の両容疑者間のそれは――。

 事件の背景には、厳重に保管されるべき通話記録が悪意さえあれば、簡単に引き出せるというシステムそのものの問題があります。

 NTTドコモ広報部によると、顧客情報を管理するシステムは大きく二つに分かれています。

 一つは顧客システム。携帯電話加入者の名前、住所、料金を引き落とす銀行口座やクレジット番号などを管理します。もう一つが料金明細システム。通話先の携帯番号、料金、通話時間など通話記録が入力されます。

 IDカードなどを使って顧客システムにアクセスできるのは、全国の社員約一千人。他方、料金明細システムには二千人がアクセスできます。

自由にアクセス

 二つのシステムは独立しており、基本的に両方にはアクセスできません。アクセスできる「三千人はいずれも管理職以上の役職」(広報部)とそれなりの体制をつくっています。しかし、嘉村容疑者のようにシステム開発をするNTTドコモ情報システム部担当者は料金明細データシステムの「通話記録に自由にアクセスできた」(広報部)のです。

 不正に情報を引き出したかどうかは、本人が不正を認めない限りわかりません。職員のモラルが大きな比重を占めているのが実態です。

 NTTドコモのシステムにくわしい関係者は「二つのシステムはまったく別でも、顧客システムに仲間がいれば、料金明細システムから引き出した通話記録から通話先の電話番号、相手の名前や住所、銀行口座の番号まで簡単に割り出せる。今回の事件はそういう恐ろしい可能性をもった問題です」と語ります。それだけにモラルの問題を含め、事件の多角的解明と対策が求められています。

 


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