日本共産党

2002年10月1日(火)「しんぶん赤旗」

育英会奨学金

院生の返還免除廃止も

小泉内閣の「構造改革」 1000万円近い“借金”に


 小泉「改革」の目玉のひとつ、特殊法人「改革」によって、大学院生の奨学金の返還免除制度が廃止されようとしています。大学院に進んで研究者を目指そうとする学生にとって、進路を左右する大打撃になり、ひいては日本の学術研究の基盤にも影響する問題です。

 小泉内閣は昨年十二月、奨学金事業を行なってきた日本育英会を、新しい独立行政法人にする方針を閣議決定しました。同時に、大学院生の返還免除職制度(研究職・教職に一定期間ついた場合、大学院で受けた奨学金の返還を免除する制度)の廃止を打ち出しました。

 閣議決定を受けて、日本育英会に代わる新機関のあり方を検討してきた文部科学省の検討会議(座長・奥島孝康早大総長)は、十月初めにも中間報告をだします。そこでも大学院生の返還免除制度は「廃止が望ましい」とされる見込みです。

 同制度で返還を免除された院生は、二〇〇〇年度、二千八百三人。免除に必要な費用は五十八億八百万円でした。〇一年度末までに大学院の奨学金を受け終わった人(累積)のうち、教職や研究職に就いて返還免除あるいは返還猶予になった人は32%を占めます。

最低でも830万円超す

 以前は、大学生にも同様の返還免除制度がありました。これが九八年に廃止され、今度は大学院についても廃止しようというわけです。大学で四年間奨学金(無利子奨学金)を受け、博士課程まで進んだ場合、大学院卒業時で返還総額は最低でも八百三十万円を超します。自宅外で私立大学に通った場合は九百二十五万円にもなります(〇二年度の貸与月額で計算)。いつから制度を廃止するかは、まだ出ていませんが、奨学生に一千万円近い借金を背負わせることになります。

 今年の春に博士課程を卒業し、経済理論の研究をつづけるAさん(31)は「ぼくらの実態からいって、非常に困る。文系で研究者をめざす場合、不況の中で民間企業にほとんど就職先はない。若手研究者の置かれた状態はひどく、研究をとるか、家族をとるかのシビアな選択を迫られるのが現状。そこにさらに多額の借金を負うことになる。研究者を志す有能な人が、研究をあきらめる事態は、おおいに考えられる」といいます。

研究にも深刻な影響

 文科省の「検討会議」は、返還免除制度を廃止する代わりに、今後、別な施策の検討が必要だとしています。現行制度廃止の方向がはっきりしているのにくらべ、新たな施策がどうなるかは「まだ、まったく見えていない」(文科省の担当者)状況です。

 ただし、方向としては、優れた業績をあげた大学院生を対象にした返還免除制度、優れた研究と認められる若手研究者への研究資金拡充、などがいわれています。

 「『構造改革』で学問分野への競争原理の導入が強調され、研究テーマが、短期的で、お金をかけずに、すぐ論文の書けるようなものになる傾向がでている。じっくり基礎をやる若手が減っている」とAさんはいいます。大学院での業績を返還免除の評価対象にすれば、そうした傾向に拍車をかけるのは確実で、日本の学問研究にとって、深刻な影響を与える問題でもあります。(西沢亨子記者)

 


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