日本共産党

2002年9月28日(土)「しんぶん赤旗」

保安院、告発者名を通報

「危険人物」と東電に

“プライバシー考慮”ウソ


 東京電力の原発損傷隠し・虚偽記載問題をめぐり、原子力安全・保安院側が、二〇〇〇年末に、情報提供者の氏名などの個人情報を東電側に提供していたことを二十七日の東電不正問題の調査を検証する評価委員会で、認めました。保安院は、情報提供者が「危険人物」とする文書を合わせて渡していました。調査に二年もかかった理由として、告発者のプライバシーを考慮したことが障害になったとしていた保安院の釈明が、うそだったことがわかりました。

 虚偽記載問題は、二〇〇〇年七月に原発の検査を請け負っていた会社の元社員からの告発が発端。当時の資源エネルギー庁は同年十二月、証拠となる書類を添付して、東電に虚偽記載疑惑の真偽をたずねる質問状を出しました。

 保安院は、前回の委員会で「(質問状を出した際)情報提供者が誰かということを東電に伝えたことはない」と説明。

 しかし、この日の委員会では、「東電が情報提供者を推定することは可能」と前回の説明を訂正しました。同委員会の中間報告は氏名を東電に伝えた保安院の姿勢を「極めて不適切」と批判しました。

 委員会終了後、佐々木宜彦院長は、東電へ質問状を出した際に渡した文書の中に「情報提供者が危険人物という文書も含まれていた」ことも認めました。説明を訂正したことについて、佐々木院長は「反省すべきことは反省するという立場からそうした」と釈明しました。


保安院に「猛省求める」

評価委

 東京電力の損傷隠し・検査記録改ざん問題で、経済産業省原子力安全・保安院の東電不正問題の調査を検証する評価委員会(委員長=佐藤一男前原子力安全委員長)は二十七日中間報告案をまとめ、保安院に「猛省を求める」と、しっ責しました。評価委員会は今後、一般から意見を求めて、中間報告を最終決定します。

 中間報告案は、通産省(当時)に米技術者から東電の不正の内部告発が寄せられた二〇〇〇年七月以降、約二年間にわたって行われた調査について「反省すべき点は多々ある」と、保安院による取り組み姿勢や調査手順の誤りを指摘。保安院が、内部告発者に直接その内容を初期の段階で確認すべきだったと批判しました。

 とくに、保安院の調査体制が内部関係者だけで行われた問題点や、最大の反省点として、東電に対してはより早い段階で法律に基づき報告させるべきだったとしました。

 中間報告案は、組織的不正や調査遅れが「現在の原子力安全規制の在り方に起因する面もある」と指摘。保安院に原子力行政の不十分さの反省を迫り、「安全確保」だけでなく「信頼性の確保」を強く求めました。

 委員から「(告発を受けた時)第一義的に安全の確保の責任を負っている事業者が実は不正を行っていた可能性があるということに対して(原子力行政が)まったく感受性を持たなかった。他にも重大な問題が改ざんされたり、不正が行われている可能性について思いが至らなかったことが、最大の問題がある」という意見がでました。


「規制」「推進」

一体化に批判続出

 経済産業省原子力安全・保安院のあり方に、東電の事故隠しの調査を検証する評価委員会の委員からも「規制」と「推進」が一体となった体制に痛烈な批判がでています。

 評価委員会のこれまでの議事録などによると、委員から「安全確保に関して、国と事業者の役割分担がきわめてあいまいであることは、保安院が作成した調査経緯でも明らかである」「実態として安全確保策のほとんどが事業者に丸投げされ、規制当局にそれを監視・評価する技術的な能力が不足していたのではないか」と、メーカーとの二人三脚ぶりに疑問が投げかけられていました。

 とくに、保安院の検査のなかで、(電力会社や原発メーカーの)「不始末が不当に見過ごされたりする悪(あ)しき『裁量行政』が存在していた可能性がある」と強調。「安全規制にかかわる行政部署と国策としての原子力推進を担う部署とが、組織的にきわめて近い距離にあり、安全規制と業界振興の同居という図式が、行政と事業者の間に必要な緊張感を失わせる原因」と指摘しつつ、「推進」と「規制」部門の一体化・癒着にメスを入れることを求める意見がでていました。

 


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