日本共産党

2002年9月21日(土)「しんぶん赤旗」

主張

賃金格差

なぜパートを平等に扱わない


 賃金の安いパートタイマー労働者が増え続けています。パート労働者総合実態調査では、〇一年に九百四十九万人を数え、一九九五年の一・四倍に急増しています。いまや労働者全体の二割を超えます。

格差は拡大する一方

 パートの増加は、企業が正社員を削減してパートをはじめ不安定雇用に置き換えているからです。

 今年の厚生労働白書も「人件費等が安く、景気変動に応じて雇用調整しやすいパートタイム労働者等の割合を高めようとするニーズが強まっている」と分析しているのです。

 重大なことはパートの76%を占める女性パートの場合、賃金が一般労働者に比べてわずか55・5%と大きな格差があることです(同白書)。

 しかも、賃金格差は二十年前の70・5%、十年前の64・4%に比べても拡大しているのです。

 九三年にはパートタイム労働法が施行されたのに、格差が拡大していることは、現行法がいかに格差是正に無力であるのかを示しています。

 同法がパートと正社員との「均衡等を考慮」するというだけで、平等の扱いを保障せず、しかも改善措置は強制力のない「指針」にとどめたためです。

 このようなパートと正社員を対等の人格として扱わない差別は、憲法の平等の理念と労働基準法の同一労働同一賃金の原則に背きます。

 パートを差別する日本の現状は、世界の流れにも反します。

 EU(欧州連合)では、パートへの差別を禁じ、同一労働同一賃金の原則を確立しています。ILO(国際労働機関)一七五号条約でもパートとフルタイム労働者との均等待遇を原則としているのです。

 政府がこの格差を抜本是正するのではなく、低賃金と格差を温存しようとしていることは許されません。

 厚生労働省のパートタイム労働研究会が七月に発表した最終報告は、ヨーロッパのような「同一労働同一賃金」は日本には当てはまらないとして「日本型の均衡処遇ルールの確立」を持ち出しているのです。

 「日本型」とは、残業や転勤ができるかどうかで格差をつけてよい、正社員と一般パートとの間に「短時間正社員」などの「中間形態」をつくり均衡を図るという方向です。

 これはパートの賃金底上げではなく、正社員の賃金切り下げで格差を縮小するという時代錯誤の考えです。しかも、この「均衡処遇ルール」さえ法制化は難しいので「ガイドライン」にとどめています。

 これでは正社員を含む労働者全体の賃金と労働条件の切り下げにつながります。

 財界が進める賃下げ・リストラと不安定雇用を拡大する「雇用の多様化」戦略に呼応する内容です。

 こうした低賃金労働の拡大に熱中するだけでは、国民の所得と消費、生産は落ち込み、経済破たんをさらに進めるだけです。

 財界系の三菱総合研究所さえパートの賃金格差縮小を推奨しています。格差縮小でパート増加は緩和され、正規従業員が増加し経済全体の所得と消費、産出額(生産額)が増えるので企業のコスト負担増にならないとの試算を発表しているのです。

均等の待遇を原則に

 いま連合、全労連など労働組合が一致して要求しているのは、パートの賃金底上げであり、正社員と同一の労働をしているパートなどの均等待遇の原則を法制化することです。その実現に努力することこそ政府の責務です。

 


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