日本共産党

2002年9月18日(水)「しんぶん赤旗」

日朝関係めぐる不破代表質問

3年前の提案の重要な意味(再録)


 史上初めての日朝首脳会談は、国交正常化交渉再開で合意しました。日本共産党は、拉致問題など両国間の諸懸案の解決のためにも、日本と北朝鮮との政府間交渉の正常なルートを開くべきだと早くから主張してきました。一九九九年に不破哲三委員長(当時)が衆院本会議でおこなった二回の代表質問から、この問題についてのべた部分を再録します。

一九九九年一月二十一日

 北朝鮮と日本のあいだには、いま複雑で重大な状況がすすんでいますが、私がとくに懸念を禁じえないのは、日本と北朝鮮とのあいだに交渉ルートが存在しないまま、対立的な雰囲気、とくに軍事的な対応の悪循環ともいうべき事態が拡大していることであります。日本では、北朝鮮からの一方的なミサイル攻撃がありうるのではないか、という心配が語られ、それにたいする軍事的な対応措置が問題になっています。一方、北朝鮮の昨年来の対外的な声明や国内での報道をみると、アメリカが韓国や日本をひきいて北朝鮮に先制攻撃をくわえるという予想が既定の事実とされ、攻撃があったら反撃するぞという戦争前夜のような言明が連日のようにおこなわれています。世界政治のいろいろな経験にてらしても、たがいに先制攻撃を懸念しあうこの状況が悪循環的に拡大することは、たいへん危険なことといわざるをえません。しかも、関係諸国のなかで、韓国もアメリカも北朝鮮とのあいだにそれなりの交渉ルートをもっているのに、日本だけは、正式の交渉ルートをもたないまま、対立的な関係だけが先行していることは、問題をとりわけ深刻にしています。

 北朝鮮の政権あるいは政権党が、国際社会におけるルールについて、われわれと共通の常識をもたないことは、私たちもよく知っています。日本共産党自身、北朝鮮の側から、国際的な道理を無視した不当な攻撃をくりかえし受けたために、一九八二年以来、北朝鮮の政権および政権党と、いかなる関係ももっていません。しかし、国際的な平和と安全のためには、また不測の事態を未然に防止するためには、相手がそういう状況にあればあるだけ、日本の側が、国際的な道理をふまえ、問題を平和的に打開する態度をつくすことが重要であります。

 その見地から、二つの提案をおこないたい、と思います。

 第一は、北朝鮮と正式の対話と交渉のルートを確立する努力を、本腰をいれて、真剣におこなうべきだという問題であります。対話と交渉の場をもたないまま、すなわち日本側の真意を相手側に伝える場、相手側の意思や認識を公式にきく場をなんらもたないまま、対立的な関係や雰囲気だけが拡大するという悪循環は、早急に断ちきらなければなりません。中断している国交正常化交渉をあらためて軌道にのせる問題に、いまこそ本格的にとりくむべきではありませんか。またそのほかの方法を含め、両政府間の接触・対話・交渉の場をひらく問題に、日本の側から積極的な対応をすべきではありませんか。

 第二に、今日の軍事的対応の悪循環では、どちらの側でも、相手側が先制攻撃にでるのではないかという心配が問題とされています。ここに、重大な点があります。私は、この悪循環を断つために、日本が、いかなる国にたいしても、先制攻撃の立場をとる意思をもたないことはもちろん、先制攻撃的な性格をもつ第三国の軍事行動に参加したり、これを支援したりする方針をもたないことを、アジアと世界の平和にたいする日本政府の基本的な態度として、いまあきらかにすることが重要だと思います。そういう立場を宣言することは、悪循環からの暴発を防止するうえでも、北朝鮮との関係で日本が日本にふさわしい平和外交を展開するうえでも、大きなささえとなるであろうことは疑いありません。

 北朝鮮問題にたいする政府自身の見解・方針をあらためてうかがうとともに、この二つの提案にたいする、首相の見解をもとめるものであります。

一九九九年十一月二日

 私は、一月国会で、日本自身が、北朝鮮とのあいだに公式の交渉ルートをひらき、問題の外交的解決にあたることを提案しましたが、これについても、政府自身の積極的な対応はありませんでした。

 しかし、この間に情勢は、大きく変わりました。アメリカと北朝鮮との交渉で、北朝鮮問題はいま平和解決の軌道にのりつつあります。日本国民をはじめ、アジアの各国もこの事態を歓迎しています。では、政府は、この局面で、どのような積極政策を用意しているのでしょうか。「有事」には備えたが、平和解決の局面への備えはなかった、というのでは、国際政治への対応はできません。

 首相。政府には、北朝鮮との関係で、日本がなにをめざすかの外交目標を明確にする責任があります。日本自身、北朝鮮とのあいだには、ミサイル問題、拉致(らち)問題などいくつかの紛争問題をもっていますが、それは、交渉によって解決すべき交渉の主題であって、その解決を交渉ルートをひらく前提条件としたり、すべてを他の国の外交交渉におまかせするといった態度では、問題は解決できません。

 また北朝鮮は、戦前の侵略戦争と植民地支配によって日本が被害をあたえた国ぐにのなかで、その清算がまったく未解決のまま残っているただ一つの国です。そのことの解決をふくめ、北朝鮮との国交の問題などにとりくむ日本自身の責任ある立場をしめす必要があります。

 この点で、外交の目標と政策を明確にもち、その努力をつくしてこそ、日本は、アジアと世界の多くの国民が心配している朝鮮半島の情勢の改善と、この地域に平和的な枠組みをつくる事業において、積極的な役割をはたしうるでしょう。

 


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