2002年9月17日(火)「しんぶん赤旗」
【ニューヨークで坂口明】十二日からの国連総会一般討論では、初日のブッシュ米大統領のイラク問題での演説に対し、米国が国連無視の立場を当面棚上げしたのを「歓迎」しつつ、対イラク戦争に反対する声が広がっています。
ブッシュ演説は、国連の承認をえないで対イラク攻撃するとの当初の方針を転換したものです。それが、今後の対イラク戦争への世界の批判をかわし、各国の支持を確保するための戦術であることは、同氏らの一連の発言で明らかです。安保理が承認しない場合には単独軍事行動に踏み切る方針を隠してはいません。
しかし、大量破壊兵器廃棄に関する安保理決議の実行をイラクに迫り、そのために国連の行動を促す立場をとれば当然、米国も責任を課されることになります。
安保理決議の実行を迫られているのは、イラクだけではありません。シリア外相がイスラエルは関連する二十八本の安保理決議に従うべきだと述べるなど、多くの国が、イスラエルの安保理決議違反を批判し、その履行を迫りました。
また、核・化学兵器などの大量破壊兵器はイラクが保有・開発するときにだけ「脅威」になるわけではありません。モーリシャス首相やアイルランド外相らが、達成期限を定めた大量破壊兵器の完全廃絶をと訴えました。
しかし、米国がすべての国による安保理決議の順守・履行を求めているわけでもなく、大量破壊兵器の脅威全般に対処しようとしているわけでもないことは、明白です。多くの国の代表は、イラクに安保理決議の履行を求めつつ、対イラク戦争反対を表明しました。
イラク周辺の中東諸国の多数が戦争反対を明言しました。キューバ外相やマレーシア副首相は先制攻撃を批判しました。ドイツ外相は「軍事力行使に導く機械的行動は望まない」と表明。安保理常任理事国では中国とロシアがイラク問題の政治解決を主張しました。
他方でイラク攻撃支持を示唆したのは、旧イラク支配国の英国や、フランス、イタリアなど。小泉首相も攻撃支持ともとれる発言をしました。アフリカなど発展途上国では、イラク問題に全く触れない代表も多数ありました。
こうして、地元中東諸国が反対し、世界の圧倒的多数の国が支持を表明しないもとで、イラクに大きな利害関係を有する一部欧米諸国が戦争支持に回る、異様な光景が浮かび上がっています。
今年の国連総会で多くの国が主張するのは「イラクだけが世界の大問題ではない」という点です。これはブッシュ戦争狂政権の横暴への根源的な批判となっています。
カバン国連総会議長(チェコ)が一般討論前の記者会見で、イラク問題が他の諸問題を一掃しないようにしたいと表明。アナン国連事務総長は開会演説で、今日の「世界平和の脅威」として第一にイスラエル・パレスチナ紛争を指摘。次いでイラク、アフガニスタン、インド・パキスタン紛争を列挙しました。
エジプト外相は「テロは世界の邪悪な問題の一つであり、貧困、病気、占領、個人や民族の権利の否定などの邪悪を忘れるべきではない」と強調。フィンランド外相は、六十億人から百億人へと急増する世界人口への対処が「膨大な挑戦課題だ」とし、今後数十年間に「持続可能な開発ができる経済・生産モデルをつくる」必要を訴えました。