2002年9月17日(火)「しんぶん赤旗」
米国が「対テロ」報復戦争に続き、イラクへの大規模な軍事攻撃を計画しています。こうした中、在日米軍基地では最近、新たな基地機能強化の動きやこれまでになかった激しい訓練が行われています。
在日米陸軍が管理する横浜ノース・ドック(神奈川県)に八月下旬から、上陸用舟艇やタグボートなど「ウォーター・クラフト」と呼ばれる米陸軍の舟艇が次々と運び込まれています。
八月二十五日に第一陣として五隻、九月六日に第二陣として十六隻が到着し、最終的には三十隻になる予定です。舟艇に加え、大量の軍用車両も運ばれています。
米軍準機関紙「星条旗」十日付によると、これらの舟艇はもともと、「米国本土の東海岸と英国のハイス(大西洋戦闘装備基地)に置かれて」いました。
米陸軍の資料によると、同軍が即応態勢を高めるため、海外に事前集積している舟艇は一九九九年六月現在で六十隻。当時、その約半数は英国のハイス基地に保管され、残りは海上の事前集積艦などに配備されていました。
これと比較すると、今回、横浜ノース・ドックに運び込まれる舟艇数(三十隻)の規模の大きさが分かります。
米側は、今回の搬入について「特定の任務や演習のためではない」としつつ、「輸送と対応時間を短縮するため」だと説明。舟艇の保管期間は「十八カ月以上」としています。
「星条旗」十日付は今回の動きは、米軍事海上輸送軍団が八月に三回、兵器や装備をクウェートに移動させたことから注目を集めたと指摘。それが「イラク侵略の前兆を示す軍備増強ではないかという憶測をあおっている」としています。
五月十五日午後九時半ごろ、米軍横田基地(東京都)から突然、青白いせん光や爆発音、大音響が鳴り響きました。周辺自治体に寄せられた苦情は二百件を超えました。「ジャイアントボイス」と呼ばれる超強力拡声器や地上爆発模擬装置などの機能試験が実施されたためです。
同基地ではその後も、緊急事態を想定した「運用即応演習」や「戦闘投入即応演習」などが六月から十一月にかけて連続して実施されています。
「星条旗」六月二十五日付によると、「運用即応演習」では、同基地の第三七四空輸航空団の「他地域への展開能力をテスト」するため、C130輸送機八機が韓国に緊急展開。「戦闘投入即応演習」では、化学兵器を搭載したミサイルによる攻撃も想定した訓練も行われています。
米海軍厚木基地(神奈川県)では七月、空母キティホークの艦載機が激しい訓練を行い、周辺住民から騒音苦情が相次ぎました。
神奈川県基地対策課によると、総件数は千二百五十八件に達し、通常の数倍。しかも、従来は騒音被害のなかった地域からも苦情が出、周辺自治体は一致して「訓練空域が拡大している」とみています。
米軍側は訓練の実態について、一切の情報提供を行っていません。
八月には苦情件数が減少したものの、空母キティホークの艦載機は同月十六日に米海軍佐世保基地(長崎県)に寄港した米原子力空母リンカーンの艦載機とともに、沖縄で激しい離着陸訓練を行いました。
横須賀基地(神奈川県)を母港にする空母キティホークは六月に修理に入りました。ヘイル艦長(当時)は「次の出動命令に備えた大規模な修理。イラクに行けと言われればいつでも出られる」(「朝日」十日付夕刊)と語っています。
米陸軍相模総合補給敞(ほきゅうしょう、神奈川県)では、七月八日から八月末まで「内陸部石油配給システム」(IPDS)の運用訓練が実施されました。
同補給敞の第三五補給管理大隊に加え、米国本土から陸軍予備役二百十人が動員されました。
パイプラインをつなぎ、内陸部の戦域に燃料補給を可能にするIPDSがコンテナに積み込まれ、同補給敞に搬入されたのは九五年と九七年。パイプラインの長さは最大九十マイル(約百四十五キロ)になるとされます。
IPDSは、九一年の湾岸戦争でも使用されており、九八年の米陸軍資料によると、相模総合補給敞のほかは、米国本土とインド洋上のそれぞれ一カ所に保管されているだけです。
同補給敞でコンテナを開け、実際にパイプラインの接続を行ったのは今回が初めて。米陸軍キャンプ座間(神奈川県)の機関紙「トリイ」九月六日号は、今回の訓練について「戦時の任務に備えて関係部隊に準備をさせるため」だと強調しています。