2002年9月15日(日)「しんぶん赤旗」
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原子力発電所の安全性の基本を、「少しの傷なら公表も修理もせずに運転を続けてもよい」という方向に緩和しよう――。経済産業省の原子力安全・保安院の佐々木宜彦院長と東京電力の榎本聡明副社長・原子力本部長の二人が専門誌の座談会でそう公言していたことが十四日までに分かりました。両者は、東電の原発損傷隠しを座談会当時知っており、東電の不正を追認するような発言です。
これは、『月刊 エネルギー』今年一月号の新春座談会「原子力発電所の検査を考える」。佐々木院長、榎本副社長(当時は常務)ら七人が出席しています。
榎本氏は、「われわれ(電力会社)が安全と考えていることと、社会が安全と感じ、安心することの間にかなりのギャップがあって、これが原子力発電所の運営にあたって一つの障害になっていると思います」と発言。佐々木氏も「技術的にいわれる安全が国民の皆さんの安全に対する考えとはかみあっていません」と榎本氏同様に「ギャップ」を指摘しています。
さらに榎本氏は軽度の事故では、「適切な保修を行って、安全を確認したという報告が終われば、自主的にプラント(発電所)を立ち上げても問題はない」と国の検査抜きの技術基準の緩和を主張しています。
榎本氏は、委員として参加する経産省の諮問機関、総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会でも同様の規制緩和を主導しています。
佐々木氏は、運転開始から年数がたち、高齢化・老朽化が問題になっている原発について言及。「欠陥の安全性を定量的に評価することができれば、それを残したまま運転を続けることは技術的に判断して正しいと思う」とのべ、これまで修理が必要だったものを、技術評価によっては、修理せずにそのまま運転を認める考えを明らかにしています。
佐々木氏は、二〇〇一年一月の同院発足当時から、東京電力の損傷隠しと検査データ虚偽記載について事実関係を把握していました。
榎本氏も、柏崎刈羽原発所長を務めていた一九九五年から九七年に、同原発の炉心構造物の傷について報告を受けていたことを認めています。座談会での両者の発言は、行政と企業が東電の問題を隠ぺいしたまま、基準緩和をしようとしていたことを示しています。