2002年9月10日(火)「しんぶん赤旗」
株価が低迷するなか、小泉純一郎首相は九日午後の経済財政諮問会議で公的資金による株価維持などの「デフレ対策」の検討を指示しました。二十日をめどに「対策」を策定する方針です。
首相の指示は、自民党が同日昼の政府・与党連絡会議で提案した「追加デフレ対策」を受けた措置です。自民党案は、公的年金、郵便貯金・簡易保険の公的資金で株価指数連動型の上場投資信託(ETF)を購入するという案です。当初案では購入資金を二―三兆円規模とする方針でした。
同案については、日本経団連の奥田碩会長が同日の記者会見で「一種の株価維持策で、(わたしは)否定的な考えだ」と反対する意向を表明。市場関係者も「価格形成をゆがめる」「デフレ対策としてはあまり意味がない」(外資系証券)と冷ややかです。政府内からも「年金積立金を株価対策に投入するのは、(安全運用を義務付けた)法律に違反する」(厚生労働省の担当者)との強い反発が出ています。
株価低迷は、日本経済の先行き不透明感を反映したもの。米経済頼みの外需に依存することの危うさや、肝心の内需では、個人消費の足踏み、設備投資の落ち込みが指摘されています。相次ぐ不祥事も企業不信に拍車をかけています。公的資金による「株価維持対策」は、こうした実体経済へのテコ入れや対策をはかるのではなく、株価低迷に責任のない国民の財産で株価を支えようとする小手先の手法だけに、批判が広がるのは必至です。
ETF 上場投資信託の略。日経平均株価など、代表的な株価指数に連動して運用される投資信託。投信法施行令の「改正」で昨年七月から始まった新しい金融商品で、証券取引所に上場されています。元本保証がなく、株価が下落すれば損失が発生します。証券会社の窓口で売買されており、一口十万円前後の少額で購入できるのが特徴です。