日本共産党

2002年8月3日(土)「しんぶん赤旗」

防衛白書

対米支援と海外展開へ

さらに軸足うつす


 二日に閣議了承された二〇〇二年版「防衛白書」に貫かれているのは、米国が地球規模で推し進めようとする対テロ戦争への参戦や国連平和維持活動(PKO)など世界展開する自衛隊を誇示する姿勢です。

イラク攻撃でも

 それを象徴するのが巻頭のグラビア。〇一年版より二ページ増やされ、そのすべてがインド洋での対米支援活動や東ティモールでの国連平和維持活動の紹介にあてられました。〇一年版のグラビアが、「わが国の防衛〜陸に海に空に〜」と、ともかくも「日本防衛」を前面に出していたのと比べ様変わりです。

 また「白書」では、米国のイラク攻撃の可能性も無批判に指摘しましたが、これもイラク攻撃での対米軍事支援を正当化しようとする姿勢をにじませたものです。

 こうした姿勢は、本文の構成にもあらわれています。

 「国家の緊急事態への対応と日米安全保障体制に関連する諸施策〜国土と国民を守るために」とした章(第三章)では、これまでの「白書」なら冒頭に「わが国の防衛」と題し、「着上陸侵攻対処」や「海上交通の安全確保」(シーレーン防衛)、「防空」といった陸海空三自衛隊の主要な任務とされる作戦が説明されたものでした。

 ところが今回、冒頭に置かれたのは、米国の対テロ戦争で自衛隊がおこなった軍事支援です。昨年のテロ対策特措法の国会審議では戦闘地域にはいかないというのが政府の説明だったのに、同章のコラムでは「姿の見えないテロの脅威を警戒しつつ約4カ月の長期にわたって、…与えられた任務を完全に果たしました」とし、攻撃を受ける危険がある中での作戦であることを誇っています。

 その次には、「各種の事態への対応」と題し、不審船・武装工作員、核・生物・化学兵器、サイバー攻撃(情報通信ネットワークを通じた電子システムへの攻撃)などへの対処や、アジア太平洋地域で米国が軍事介入する「周辺事態」への対米支援を置きました。

 「わが国の防衛」が登場するのは、ようやく三番目です。

 「国内外に広がる活動の場」(第四章)と題した章では、東ティモールでのPKO活動を説明したほか、多国間共同訓練の叙述を強化しています。

 今回の「白書」は、「わが国の防衛」より、一国覇権主義の立場を強める米戦略への支援と、自衛隊の海外展開に、軸足をいっそう移しつつあることを示しています。

有事法案に執念

 有事法制は今回、格上げされ、対テロ戦争支援や「わが国の防衛」と並んで「武力攻撃事態への対応に関する法制への取組など」とした独立した節で、詳しく法案概要を説明。秋の臨時国会での成立をめざす執念がうかがえるものです。

 自衛隊と国民とのかかわりを説明する章(第五章)では、これまで冒頭におかれた不発弾処理などの「国民生活への貢献」にかわり、「防衛力を支える基盤」として自衛隊の組織や軍事産業、秘密保全などを説明。これまで「維持」とされてきた軍事産業について、「充実強化」としました。

 また今回、防衛庁の省昇格について「早期に成立を望んでいる」と初めて明記しました。

 一方、国民を監視対象にするものとして強い批判をあびた防衛庁リスト問題については、「秘密保全に対する取組」の中のコラムで言及。「情報公開と国の防衛にとって重要な情報の収集・保全を峻別(しゅんべつ)」するとのべて、国民に対する情報収集活動を今後も続ける構えを示すなど、なんの反省もありません。

 (田中一郎記者)

 


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