2002年7月27日(土)「しんぶん赤旗」
早期退職者の年金支給開始年齢の引き上げ、処方せん料の値上げ、障害年金への課税など、福祉制度改悪が続くオーストリアで、こうした動きに反対し、充実している福祉を守ろうという運動が広がっています。合言葉は“憲法に社会国家の規定を”。運動参加者は、福祉破壊を食い止め、時代に適合した新たな形での福祉国家実現に向け、憲法でオーストリアを「社会国家」と規定するよう求めています。(ウィーンで岡崎衆史 写真も)
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「社会国家運動」の発起人は、著名な学者やジャーナリスト、医者などの個人です。そのうちの一人、ジャーナリストのレナータ・シュミットクンツさんは、(1)最近欧州で自由化や規制緩和一辺倒の新自由主義的な考え方が強まっていること(2)オーストリアの右派政権(自由党と国民党で構成)の下、社会福祉改悪が行われていること―を批判します。「経営者など少数の人々が経済的利益を独占し、国民多数のための社会・福祉政策予算を削減するこうした傾向は受け入れられない」というのです。
貧しい人々から福祉や医療、教育、雇用の機会を奪う新自由主義的政治ではなく、人間的な生活や平等の機会を国家が保障する福祉国家の積極性を訴えていくことを、運動の狙いとして強調します。
支持者は、多数の個人とともに、労組や市民団体、宗教団体、野党の社民党と緑の党、オーストリア共産党など四百組織以上にのぼっています。地方自治体の首長六十四人も支持を表明しています。
二〇〇〇年二月に誕生した右派政権は、早期退職者の年金支給年齢引き上げ、処方せん料値上げ、傷害年金への課税、大学学費の導入など、財政赤字削減の名の下で既存の福祉を次々と破壊してきました。
議会第一党で野党の社民党は、二〇〇一―〇三年の間の福祉破壊による労働者の負担増は三十一億ユーロ(約三千七百億円)に上ると批判しています。すでに、年金生活者や青年、労働者などの生活に大きな影響を与えており、国内各地で増える大小の抗議行動の要因となっています。
福祉改悪に反対し、「社会国家運動」を進める人々は四月、憲法に「社会国家」の規定を盛り込むことを求める国民請願署名を実施しました。集まった署名数は七十一万七千三百十四人、有権者の12・2%に達しました。運動に敵対してきた自由党からさえ「署名者の懸念は真剣に考慮しなければならない」(シュバイツァー書記長)の声がでました。
国民請願は、国民に法案の発議を認める憲法上の制度です。有権者十万人以上の署名が集まった場合、国民議会(下院)での法案審議を義務付けています。すでに六月、国民議会で請願内容についての審議が始まっています。福祉擁護のたたかいは議会も巻き込みながら、秋からいっそう強まる様相を示しています。
「福祉破壊に反対し、社会国家を求める活動はまだ始まったばかり。今後、さらに規模を広げ、全欧州的な取り組みにしたい」。医療改悪が進む日本の状況とそれに対するたたかいにも関心を示しながら、シュミットクンツさんは語りました。