日本共産党

2002年7月23日(火)「しんぶん赤旗」

イラク攻撃に固執するブッシュ米政権

アラブ、欧州、米国内に懸念と批判

「外交努力が困難に」「米は憶測流すだけ」


 ブッシュ米政権がイラク攻撃にあくまでしがみつく姿を露骨にしています。多くのメディアや軍事専門家が来年早々の作戦開始を予想するなか、「悪の枢軸」論や「先制攻撃」論に基づくこの無法な戦争計画への懸念や協力反対の国際世論も高まっています。

 「世界には、米国による直接攻撃でしか対処できない地域がある」「われわれは必要なときには武力を行使する」。ブッシュ米大統領は十九日、ニューヨーク州の米軍基地でこう演説し、アフガン戦争にも参加した第一〇山岳師団の兵士たちが「サダム(フセイン・イラク大統領)を打倒しよう」の歓声で応えました。

あらゆる手段「行使」と表明

 イラクを名指しこそしなかったものの、この演説の意味は明白です。同大統領は六月一日に初めて、テロリストなどの攻撃を阻止するために「先制攻撃の準備」を訴えました。七月八日の会見では、フセイン大統領打倒のために「あらゆる手段を行使する」と表明しており、大統領自身がイラク先制攻撃への並々ならぬ決意を示す異常な事態となっています。

 決意表明だけではありません。十九日の演説のまさに同じ日、イラク軍当局者は、米軍の爆撃により同国南部で一歳の女児を含む市民五人が死亡したと発表しました。

 一九九一年の湾岸戦争以来、米軍は英軍とともにイラク南北に設けた飛行禁止空域のパトロールを名目に、民間施設も含めた「持続的空爆」と呼ばれる爆撃を続行。最近は空爆回数が増加し、十九日の爆撃は十三日、十四日に続くものでした。

周辺諸国への懐柔工作も

 米紙ニューヨーク・タイムズ五日付は、二十五万人を動員し、南、北、西の三方からイラクを侵攻する計画をすっぱ抜き、世界を驚かせました。また、攻撃準備のためにすでにトルコ・イラク国境に米兵三千人が展開しているという報道(クウェート紙アッライアッラアム紙二日付)もあります。

 米国のウルフォウィッツ国防副長官は十四、十六、十七日に、米国がイラク攻撃の出撃基地提供を期待するトルコを訪問し、政府首脳や軍関係者とイラク問題を協議。「もしイラクが民主的国家になれば、トルコは膨大な利益を得る」と、経済援助をちらつかせた懐柔工作を行いました。

 イラク攻撃をめぐっては、米議会関係者の「奇妙なのは、政権中枢の経済スキャンダルが話題になればなるほどイラク攻撃計画が強硬かつ鮮明になる」(英紙オブザーバー)との声の一方、「米国とイラク問題を協議した仏高官によると、イラク攻撃は十一月の米中間選挙前にもありうる」(イスラエル紙ハーレツ)との情報もあります。

「脅威の抑止は軍事以外にも」

 米国防副長官の懐柔工作にもかかわらず、トルコのエジェビット首相は二十一日、同国のテレビで「イラクの脅威を抑止する方法は軍事攻撃以外にも存在する」と米国をけん制しました。

 三月のアラブ首脳会議はイラク攻撃反対の決議を全会一致で採択しています。ムーサ・アラブ連盟事務局長は十五日、「アラブ諸国はアラブ国に対するどんな連合にも決して参加しない」と、攻撃反対の姿勢をあらためて鮮明にしました。米国がトルコとともに、出撃基地化を期待するヨルダンも米軍の領土使用拒否を表明。アブドラ国王は十七日にアラブ首長国連邦皇太子と会談し、「両者は、湾岸地域の安全を脅かすイラク攻撃に反対する立場を再確認」しました。一九九〇年の湾岸危機でイラクの侵略をうけたクウェートのジャビル国防相も十八日付の同国紙で「クウェートはイラク攻撃の脅しを支持しない」とのべました。

米非難の声明 ロシアが発表

 欧州でもイラク攻撃への懸念は同様ですが、とくに、ロシア外務省は米軍による十九日のイラク空爆にたいし「ロシアは飛行禁止空域における違法な作戦がイラク問題解決のための国際的な政治的外交的努力を困難にしていると確信する」との声明を発表、米国非難を隠しません。

 注目されるのは、米国でもイラク攻撃への懸念が広がっていることです。米紙ボストン・グローブ二十日付は、長年、イラク武器査察官を務めたスコット・リッター氏の寄稿を掲載。同氏は、「ブッシュ政権は大量破壊兵器問題の具体的情報をなんら示しておらず、単に憶測を流しているにすぎない」「戦争は軽々しく企てられるべきではない。米国の建国者はそのことを理解して憲法を起草した」とのべています。

 さらに米紙クリスチャン・サイエンスモニター十七日付の「イラク侵略に国民はついてくるか?」と題した記事は、六月二十一日にギャロップ社が公表した世論調査で国民の59%がイラク攻撃を支持しているものの、同社の別の調査では、半数以上の国民が同盟国の支持が得られた場合にのみ攻撃を支持していることに注目。米国が今後も一方的な軍事作戦に固執した場合の世論離れの可能性を指摘しています。(小泉大介記者)

 


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