日本共産党

2002年7月20日(土)「しんぶん赤旗」

東京都アクアラインにみる

ムダと癒着の構図

《中》

財政主導 建設は民間、借金は公団に


 「民間会社なら責任が明確になる」「民営化によって“コスト意識”が徹底し採算性を重視するようになる」――道路四公団民営化推進委員会設置のさい、小泉純一郎首相や、石原伸晃行革相が国会答弁でくりかえしてきた決まり文句です。東京湾アクアラインは当初から「民間主導」ですすみ、民間企業が食い物にした巨大公共事業でした。

新日鉄の“夢の橋”

 アクアライン計画に初期の段階でとりくんだ「東京湾横断道路研究会」。一九七二年にできたこの研究会は、アクアラインが国家的事業であるとして、その建設を強力に主張しました。

 「設立当時の会員は鉄鋼、造船、機械、石油精製、電力、ガス、商社、金融、不動産関係の会社により構成」(国交省・大石道路局長、五月二十一日の答弁)されました。

 会長が、当時、新日本製鉄会長の永野重雄氏、理事長が同専務と、「新日鉄主導」でした。アクアラインの千葉側には新日鉄君津製鉄所があります。同社はこの研究会をつうじて、アクアライン建設を主導しました。

 もう一つの建設推進団体が、JAPIC(社団法人・日本プロジェクト産業協議会=八三年設立)です。現在も活動する、大型プロジェクトの立案・推進を目的にした財界団体です。

 「正会員が百五十二団体、鉄鋼、建設、商社、金融などの企業がおもな会員」(同道路局長)。会長をつとめたのは、やはり新日鉄会長の斎藤英四郎氏。斎藤氏はのちに財界総本山・経団連の会長に就任しますが、東京湾アクアライン建設を軌道にのせたことが実績として評価されました。

 この建設工事で、鋼材約四十万トン、東京タワー百十五基分が消費されたといわれます。アクアラインは、ほかならぬ、新日鉄・ゼネコンにとっての「夢の懸け橋」でした。

建設費が3割増

 アクアラインの建設費は当初、一兆千五百億円と見込んでいましたが、途中から雪だるま式に膨れあがり、完成時には一兆四千四百億円になりました。

 建設に充てられた借金の償還(返済)期間は当初三十年でしたが、二〇〇〇年の事業変更で五十年に先延ばしされました。さらに、黒字の京葉道路と一体の道路とみなし収支を計算する仕組み(千葉プール)に移されて、単独の収支が見えないようにしてしまいました。

 アクアライン建設にあたって、民間会社「東京湾横断道路株式会社」を設立しましたが、役員には旧建設省、道路公団、旧大蔵省などの「天下り」官僚がズラリ。

 しかも、アクアラインの膨大な借金は東京湾横断道路株式会社でなく、公団がかぶるのです。大石道路局長は「アクアラインは、日本道路公団が資産を保有することにした。会社が負担する金利は公団が会社に払う。金利、交通量変動のリスク(危険)も公団が担う」と国会答弁しました。

 吉川春子議員はこう批判しました。

 「やりたい放題の放漫で建設費が途中で三割もふえた。そういう工事をして、“もうそれは一切責任を負わなくていい、全部道路公団が負う”。公団といっても最後は政府がみる。政府ということは国民の税金です。膨大な赤字がでることがわかっていたから、道路公団の所有にしたのではないか。とんでもないことだ」

 こんな浪費がまかりとおった裏には、工事受注企業から、政権党・自民党への巨額の献金がありました。

 (つづく)

 


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