日本共産党

2002年7月19日(金)「しんぶん赤旗」

小泉内閣「骨太の方針(第2弾)」

国立大学「民営化」への施策を加速する

改正 充


 小泉内閣は「骨太の方針(第二弾)」を六月二十五日に決定しました。すでに破たんが明らかになった小泉「構造改革」に固執し、国民のくらしをさらに破壊する施策とともに、大企業への支援策をおしならべ、その筆頭に「大学改革」や「人材養成」をあげています。

*強引に国立大学法人化をはかる

 その最大の問題は、「国立大学法人化の平成一六年度開始」を既定化したことです。文部科学省は、昨年六月の「骨太の方針」に対応して「大学の構造改革」をうちだし、国立大学の制度を解体し民間経営の手法で運営する「国立大学法人」にする構想を、今年三月に発表しました。これには、大学関係者からの厳しい批判がひろがっています。法人化の法案が国会にだされる前から、文科省が各大学に法人化を準備する膨大な作業を求めていることにも、国立大学協会のアンケート(五月)で、学長の九割から「法律も未だ見えないので、大学で決めてよい範囲が明確でない」との不安が表明されています。

 「第二弾」は、これらの批判や不安にこたえるどころか、強引に「法人化」をはかる姿勢を示しました。国大協が政府に対し「本協会の意見を聞くなど適切な判断のもとに、大学の自主性・自律性を殺ぐことのないよう」(会長談話)配慮を要望していることなど、まったく意に介さないやり方です。

*民間経営の手法を前倒しで実施

 しかも、「第二弾」を答申した経済財政諮問会議の日本経団連会長ら民間議員四人が、四月三日の同会議に提出した報告「研究・技術開発の活性化について」のほとんどを丸のみし、国立大学「民営化」への施策をいっそう具体化しています。「法人化後の大学運営について、複数の民間機関等による評価を実施する」など、文科省の構想にさえなかったものまでうちだしました。

 さらに、「法人化」する以前にも、「弾力的な勤務形態(例えば週二〇時間勤務)による教官の任用を進め、兼業・起業を促進する」、「経営専門家等民間からの採用、大学事務の外部発注を促進する」など、文科省が「法人化」構想で民間経営の手法として検討中のことを、前倒しで実施するように求めました。

 これらは、企業の関係者が大学の運営や教育研究に直接関与したり、参加することを促進し、大学の経営、事務にあたる部門を切り離して、民間などが下請けすることを狙ったもので、利潤追求のための「競争」と「効率」という企業経営の論理を露骨な形で大学に押しつけるものです。

 また、大学教員に「競争的環境の下で研究費を獲得し、経済社会との連携を深める」ことを強調し、「大学院、学部・学科の設置規制を柔軟化し、教育機関間の競争を活性化する」、「ITやライフサイエンス等、高度な知識を要する分野での人材供給を…倍増する」ことも求めました。「産業競争力」を強化するため、政府・財界が戦略的重点化をはかる四分野(IT、ライフサイエンス、環境、ナノテク)に大学予算をいっそう重点配分するとともに、この分野の人材の大量供給に大学の教育機能を偏重させるものになります。

*学術、教育を台なしにする

 このように、「骨太の方針(第二弾)」は、「経済活性化」と称して、大学の教育研究の成果を「産業競争力」の「再構築」に全面的にむすびつけるために、「大学の構造改革」を加速し、「民営化」への施策を強引にすすめようとするものです。これがすすめば、大学の独立性、自主性は失われ、大企業などによって短期間に実用化できる研究成果をうみだす大学だけが重点育成されるでしょう。それは、わが国の学術、教育を台なしにするものです。

 それだけに、大学関係者、国民との矛盾を広げざるをえません。日本共産党の「国民の立場で大学改革をすすめるための提案」(四月二十日)がよびかけたように、「大学をまもるための共同のたたかい」の大きな発展が期待されます。(党学術・文化委員会事務局次長)

 


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