日本共産党

2002年7月18日(木)「しんぶん赤旗」

東京湾アクアラインにみる

ムダと癒着の構図

≪上≫

大失態 交通量は予測の3分の1


 ムダな道路をつくりつづけて日本道路公団の借金をさらにふくらませるのか――。六月下旬、道路四公団民営化推進委員会が鳴り物入りで発足しましたが、最大の公共事業・道路問題にどうメスを入れるのかが問われています。政府の審議会報告も「採算の見通しの失敗」と名指ししている、道路公団管理の東京湾横断道路(アクアライン)にこの問題を見てみました。(山沢猛記者)


ゴーストタウン化

 川崎市と千葉・木更津市をむすぶ延長十五・一キロの一般有料道路、東京湾アクアライン。「夢の架け橋」といわれた開通から四年半。その一方の出入り口である千葉側で異変が起きています。

 「街はゴーストタウン」、タクシー運転手はいいました。

 JR木更津駅の目の前にある大手デパートが撤退。駅前通りの古くからの商店街には昼もシャッターを閉じた店が目立ちます。

 「アクアラインができてから、まとまった買い物をする人はバスにのって横浜、川崎の繁華街にいくようになった。地元を利用する客は激減し、スーパーマーケットが何軒もつぶれている。足のない年寄りは生活に困っています」

 隣の袖ケ浦市の自宅から木更津市の事務所に通う男性もこういって顔をくもらせます。

 かろうじて活気を見せているのが、バス乗り場。アクアラインの橋のたもと、袖ケ浦市の朝のバス停には、高い料金の自家用車からバスにのりかえ川崎方面に通勤する人でいっぱい。しかし、普通車や、それよりさらに高いトラックの通行はさっぱりです。

 「地域が活性化する」「暮らしが快適に」などのふれこみでつくられたアクアライン。それが活性化どころか、まちの経済を直撃しています。

毎年280億円の赤字

 アクアラインは、国、自治体、民間企業三社が出資して、借金でつくりました。借金の償還(返済)計画では、一日の交通量を三万三千台と予想。しかし、実績はその三分の一、一日平均一万千九百台にすぎません。

 二〇〇〇年に料金値下げ(普通車一台四千九百円を三千円に)を含む事業計画の変更をしましたが、その後も一日平均一万三千台です。八七年の最初の計画比では四割という惨状です。

 この七月、道路公団はETC(料金自動支払い装置)通行車両のみ普通車三千円を二千三百二十円にする引き下げを発表しましたが、ETC車はまだ少なく、どれだけ効果があるか不透明です。

 当然、収支は深刻です。九九年でみると、料金収入が百四十四億円にたいして、支出は管理費二十七億円、借金の利払い四百四億円。収入は支出の三分の一、毎年二百八十億円もの赤字を増やしつづけています。

 「交通量の予測はいまからみると、むちゃとしかいえない建設費が先にあって、それにあわせて予測交通量をたてたとしかいいようがない。とんでもない大失態です。三千円に下げても車が通らない。この責任をだれがとるのか」

 日本共産党の吉川春子議員は参院内閣委員会(五月二十一日)でこの問題をとりあげてこう迫りました。

 国土交通省の大石久和道路局長(当時)は「計画交通量と実績では大きな乖離(かいり)があった」「このような結果については反省している」と失敗を認めました。

 しかし、国土交通省はもう一つの道路を東京湾にかける「東京湾口道路」(横須賀―富津間)計画の調査費を今年度予算でも計上しています。失政になんの反省もありません。(つづく)

 


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