日本共産党

2002年7月7日(日)「しんぶん赤旗」

どうなってるの?――…

「食の安全」行政


 ホウレンソウ、お菓子、牛肉…。何を食べたらいいの? 食べ物の安全に今ほど国民が不信を抱いているときはありません。今年に入っても、外国産を国産といつわる違法行為や輸入野菜の残留農薬、違法香料など、BSE(牛海綿状脳症)問題につづき食をめぐる事件が相次いでいます。食の安全をどう守っていったらいいのでしょうか。


広がる「食」への不信

あいつぐ事件で「食の安全」行政が根本から問われる事態になっています

 六倍、九倍もの残留農薬が次々と検出された中国産冷凍ホウレンソウ。農薬の多くは、シロアリ駆除に使われ、発がん性のあるクロルピリホスです。

 輸入牛肉を国産といつわり国の助成金を受けていた牛肉偽装は、雪印食品に続いて日本食品もおこなっていました。偽装は食肉卸大手のスターゼン、丸紅、全農チキンでつぎつぎ発覚しました。

 ミスタードーナツの肉まんには無認可添加物が使われていました。協和香料化学茨城工場が製造していた違法香料事件では、食品数四百二品目にものぼり、空前の回収騒動になりました。

 日ごろ口にするものが、これほど危険で信用できないものだったとは驚きです。

安全を守るしくみは

厚生労働省が所管する食品衛生法、農水省所管の日本農林規格(JAS)法という二つの法律の枠組みで、国産・輸入農産物や加工食品の安全を守ることになっています
写真
基準をこえる残留農薬検出で、中国産冷凍ホウレンソウを売り場から撤去したことを伝える大手スーパー=6日、横浜市内

 長年の消費者運動や世論が求めてきた「原産国・原産地表示」は、一九九九年になってやっとJAS法改正で導入されました。この義務付け制度は、野菜九品目からすべての生鮮野菜に拡大されました。しかし、虚偽表示をしても農水省の指示にしたがえば企業名も公表されず、甘い規制にとどまっていました。それは、BSE問題に端を発した食肉偽装事件で大きく信頼を揺るがすことになりました。

 食品添加物や、残留農薬で問題となっている輸入冷凍(生鮮)野菜などは、食品衛生法で、安全が確保されている建前でした。

 しかし、食品衛生法は、消費者の権利を明確にせず、政府の公的責任が希薄な制度となっており、その欠陥が長年にわたって放置されてきました。

 その結果、たとえば、消費者にとっては、いつどこでつくられた農畜産物かも、どんな添加物、香料が食品につかわれているかもはっきりわからないままとなっています。食品の安全は事実上業者まかせです。

行政と企業の責任は

規制緩和で安全基準が次つぎ緩められ、行政体制も切りつめられてきました

 その一つが一九九五年の食品衛生法の「改正」です。安全の確認されていない食品添加物を一挙に認め、残留農薬も外国のゆるい基準に合わせて規制を緩和しました。このとき、公的責任でおこなう水際(輸入手続き段階での)検査を廃止し、モニタリング検査だけにしました。この検査の致命的欠陥は、検査結果が出る前に流通し、消費者が口に入れることです。しかも、検査する食品衛生監視員は全国三十一カ所の検疫所に二百八十六人。十六万件もの輸入食品の届け出がある横浜検疫所(横浜市中区)には十一人しか配置されていません。

 厚生労働省は冷凍ホウレンソウなど冷凍加工食品に残留農薬の基準さえつくっていません。冷凍ホウレンソウの残留農薬汚染を告発した農民連食品分析センターの石黒昌孝所長は「いまの『検査』体制は、輸入業者が安くいつでもひきとれるためのものでしかない」と公的責任による検査とともに、違反業者へのきびしい措置を求めます。

 検査体制の弱体化は、一方で企業のモラルハザード(倫理破たん)、もうけ第一主義とも相まって、さまざまな食品事件を起こしています。

 食品添加物については「使用は極力制限すべき」との国会決議に反して、合法化してしまえば問題ないというのが国の姿勢です。元大阪大学講師の藤原邦達さんは「国が安全だと許可した添加物だけを使うという、戦後確立した安全確保のシステムを根本的に崩壊させる」と批判します。

「安全」をどう確保

「食」の安全確保は消費者、国民の権利であることを明確にし、国の責任で必要な体制を確立することです

 頂点に達する国民の怒りと不安を前に、政府は食品安全庁の新設、食品安全基本法の制定、表示方法の改善などを検討しています。

 日本共産党は、現在の食品衛生法を抜本的に改正し、「食品安全確保法」とするよう提案し、この法案を参院に提出しています。ここでは、食の安全に対する消費者の権利を明確にし、法律の目的も、現行の取り締まり中心から、「食品の安全性を確保することにより、国民の健康を守ること」を打ち出しています。

 改正の柱は六つ。第一が、輸入食品の検査の見なおしと、国内検査体制の強化です。モニタリング検査を水際(輸入手続き時)検査体制に戻し、輸入食品の水際検査率を当面二〜三割程度にひきあげ、安全チェックの人員を大幅に増やして検査体制を抜本的に拡充することです。

 第二に農薬や食品添加物の残留基準の規制を強化。日本の食生活にそくした厳しい国内基準をつくり、基準のないものについては輸入、流通を禁止することです。

 そのほか、消費者の知る権利として表示を義務付けることや、因果関係が解明されていなくても、食中毒や健康被害などの予防的観点から販売を規制できる「予防原則」のしくみを提起しています。


先月発覚のおもな食品違反事件

1日▽禁止添加物/シューマイ/39万個を販売
3日▽無認可香料 グリコとブルボン/菓子を自主回収
4日▽無認可添加物の冷凍食品回収 マルハ
5日▽中国産冷凍ホウレンソウに残留農薬 ニチレイ
5日▽中国産冷凍ホウレンソウに残留農薬 ローソン
6日▽中国産冷凍ホウレンソウに残留農薬 味の素
7日▽焼き型油に違法添加物(東京・北区)
10日▽無認可香料/「桃の天然水」360万本を回収
11日▽ふりかけに潤滑油(三島食品)自主回収
11日▽薬品臭の豆腐を自主回収 イオン
14日▽松阪牛偽装コンビーフ販売 日東ベスト12
▽中国産冷凍ホウレンソウ回収 雪印冷凍食品、蝶理、加ト吉
16日▽中国産冷凍ホウレンソウ加工食品回収 ニチレイ
17日▽韓国産生カキを宮城県産として偽装販売
18日▽無認可添加物/中国から輸入弁当 雪印冷凍食品
22日▽スモークサーモンなど回収イオン 無認可添加物
24日▽中国産冷凍ホウレンソウ回収 ニチロ
25日▽中国産冷凍ホウレンソウ回収 ミホウジャパン
28日▽サンキストオレンジから残留農薬 22トン
28日▽輸入牛スジを国産偽装し国に122トン買い取らせる 日本食品


増える輸入野菜

 増える輸入野菜。90年代に入って、とりわけ中国産が急増。その多くを「開発輸入」するのが日本の量販店・商社・冷凍加工食品会社です。

輸入食品増・減少する検査率

 日本の自給率(カロリー)は、4割。激増する輸入食品。90年の輸入届出重量では、農産食品が1804万トンともっとも多く、農産加工食品が338万トン。畜産食品、水産食品が次いで多く、4種で食品分類全体の8割以上を占めます。

 届出件数にたいする行政検査率は、92年5.9%から00年には3.4%へと減少。ノーチェックの食品が国内に流通しています。

図図

 


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