日本共産党

2002年6月7日(金)「しんぶん赤旗」

両長官の罷免当然

有事法制はきっぱり廃案を


 「非核三原則」をあっさりと覆す福田康夫官房長官、情報公開請求者のリスト作成問題をめぐる中谷元・防衛庁長官の後手後手の対応――いずれも職務にとどまることが許されない言動です。ところが、小泉純一郎首相は、福田長官について「(内閣の)大黒柱だ。罷免など全然考えていない」(五日)と平然としているから事態はいっそう深刻。福田、中谷両長官は、有事法案の担当大臣でもあります。二人の長官の罷免と同時に、有事法案はきっぱり廃案にすべきです。(高柳幸雄記者)


重い「国是」軽く覆す

「非核三原則」釈明では済まない

福田長官

 「非核三原則は今までは憲法に近いものだった。しかし、憲法も変えようという時代だから、国際情勢が変化したり世論が核をもつべきだとなれば、変わることだってあるかもしれない」

 福田長官が五月三十一日に行った「政府首脳懇談」での発言は、核兵器の速やかな廃絶を求める世界の流れに、唯一の被爆国である日本の政府が逆流をもちこんだ暴言でした。核兵器を保有するインドとパキスタンとの紛争が緊迫する中で行われた発言だけに、諸外国からごうごうたる非難が起きるのも当然です。

 「非核三原則」は、歴代自民党政府ですら、「国是」として、将来にわたって「不変の原則」「不動の方針」と国会で答弁してきたものです。

 この非核三原則が「変わることもあるかもしれない」と述べた福田長官の発言はどういう流れの中で出てきたのか。

秘書官耳打ちあわてて訂正

 「政府首脳懇談」直前の五月三十一日夕、福田長官の定例記者会見では、次のようなやりとりがありました。

 福田「長距離ミサイルとか核爆弾とか、非核三原則もあるかもしれないが、理屈から言えば持てる」

 記者「それでは、大陸間弾道弾(ICBM)も法理論的にも必要最小限の武器の範囲内という解釈か」

 福田「憲法的に、法律的に持ってはならないことにはならないのかな。私もあいまいですけど、そういう兵器はどうだろう」

 この福田長官の発言は、大陸間弾道ミサイルは「専守防衛の範囲をこえるため、法理論上持てない」との従来の政府見解にさえ反するもので、その後、秘書官に耳打ちされ、「ICBMは持ってはいけないことになる」と訂正しました。

 そして、その直後の「政府首脳懇談」で、「非核三原則で核は持たないことになっている。それなら非ICBM三原則も作るか」(日経」5日付)と軽口をたたき、非核三原則の見直しに言及したのです。

 発言の中身もさることながら、被爆者の思いも、核をめぐる現下の情勢も歴代政府の見解さえも、まったくわきまえない無神経さ――これだけとっても官房長官失格です。

“腹話術”のようウソまでついた

 しかも、釈明に追われた三日の記者会見では、「政府首脳」として報じられた自分の発言に、「(政府首脳に)確認したら、そういうことはいっていないとはっきり言っていた」と“腹話術”のようにして平気でウソまでついたのです。

 釈明のため出席した五日の衆院厚生労働委員会理事会では、「マスコミが私の真意を伝えなかったのは残念」と報道機関に八つ当たり。「現内閣」での「非核三原則」の堅持を言い出しましたが、将来の見直しの可能性については「先の話を聞かれても困る」(三日)と否定していません。あとでいくら「釈明」しても、取り返しがつかないほど、日本の国際的信頼を傷つけた責任は免れません。


防衛庁ぐるみ国民監視

知らなかったでは済まされない

中谷長官

 防衛庁の情報公開請求者のリスト作成が発覚したのは五月二十八日。それ以来防衛庁は、海上自衛隊幕僚監部の情報公開室の三佐が作成していたリストについて「個人の発意」と説明してきました。

“漏らしたやつ悪い”と居直り

 しかし、その後、同庁の内局や陸・空の各部署でも同様のリストを作成し、庁内情報通信網(LAN)に掲示し、庁内でだれでも利用できるようにしていた事実が判明。国民を敵視して監視のもとにおき、組織ぐるみで情報公開請求者の思想・信条の自由を侵す、憲法違反の調査を系統的に行っていたのです。

 個人や一部局にとどまらない、まさに防衛庁をあげた“組織ぐるみ犯罪”です。その長たる中谷長官の責任が免れないのは当然です。

 「『漏らしたやつが悪い』というのはおおせの通り。国を守り、組織を守るというのは情報公開とは別の世界だ」(「読売」5日付)

 四日開かれた自民党国防関係合同会議で伊藤康成防衛事務次官は、国防族議員から相次いだ、リスト作成を当然視する発言を受けてこう言いました。

 今回はたまたま漏れたが、漏れなければいつまでも続けていい。国民を監視の対象にすることも当然だ――。何ら反省のない防衛庁・自衛隊の根深い体質を告白したものです。

責任者なのに暴走見過ごす

 中谷長官は、この組織犯罪に厳正に対処できないばかりか、組織ぐるみのリスト作成と隠ぺいの事実もつかんでいませんでした。

 防衛庁事務方が、リスト作成が全庁にわたる事実を“把握”したのは五月三十一日。中谷長官が知ったのはシンガポール外遊中の六月一日昼すぎ、事務方から入った電話ででした。その中身も陸幕だけ。内局と空幕のことは帰国直後に報告を受けるありさまでした。

 しかも、海幕三佐のリスト作成問題が発覚した直後、庁内のLANから一斉に削除された事実も、中谷長官は知りませんでした。

 しかし、「知らなかった」では済まされません。防衛庁・自衛隊の暴走を見過ごす中谷長官に責任者としての任は務まりません。

 


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