日本共産党

2002年5月26日(日)「しんぶん赤旗」

“過去の過ち繰り返さないため…”

日本史研究会が有事法制反対


 日本史学の単独学会としては最大規模(会員三千五百人)の日本史研究会(代表委員・小山靖憲帝塚山大学教授)は、「有事法制制定の動きに反対する声明」を報道機関に二十四日までに送りました。声明の全文はつぎのとおりです。

 政府は四月一七日、いわゆる有事法制関連三法案を国会に提出した。これらの法案には、政府の言う「有事」に際して(1)政府の指示に従わない市民への罰則規定、(2)土地収用の乱用等、国民の財産権の侵害、(3)地方自治体の首長の権限の制限等が盛り込まれており、基本的人権の保障や地方自治の精神に明らかに抵触するものである。

 今回の法案は、いわゆる「同時多発テロ」や「不審船問題」などの国際情勢の変動に便乗する形で提出されたものである。また「武力攻撃のおそれのある場合」や「事態が緊迫し、武力攻撃が予測されるに至った事態」まで「武力攻撃事態」とするなど、「有事」の規定は極めて暖昧である。そのため、国民の認識からかけ離れたところで、政府が恣意的に有事法制を発動できる危険性をはらんでいる。

 また、在日米軍との共同活動・相互援助が謳われていることは、米軍の戦争に日本が否応なしに巻き込まれる危険性を示す。東アジア地域における米軍の軍事行動に際してなし崩し的に「有事」の認定が行われ、憲法の禁ずる集団的自衛権を発動することにつながりかねない。

 このような背景・内容を持つ有事法制は、明らかに日本国憲法に反するものである。

 一九三八年に制定された国家総動員法も、十分な議論・議会の審議を経ることなく成立した。同法がいかに取り返しのつかない、悲惨な結果をもたらしたか、我々はよく知っている。このような歴史的経験を無視して、「有事」の具体的な内容について言明しないまま、ひたすら「備えあれば憂いなし」の論理で押し切ろうとする小泉首相の姿勢には危惧を覚えざるを得ない。

 よって日本史研究会は、歴史の教訓を学び、過去の過ちを繰り返さないという立場から、政府の進める有事法制の制定に強く反対するものである。

 


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