日本共産党

2002年5月8日(水)「しんぶん赤旗」

主張

有事法案

先制攻撃の禁止なぜ明記せぬ


 日本が武力攻撃を受けなくても先制的な武力行使に道を開くことになりかねない―。有事法案のこんな危険が、日本共産党の志位和夫委員長の追及で浮きぼりになりました。

 法案は、「武力攻撃事態」を終結させるための「武力の行使」を明記し、その「武力攻撃事態」には、武力攻撃が「発生した事態」とともに、「おそれのある場合」「予測される事態」をあげています。

武力攻撃の恐れでも

 小泉首相は、武力攻撃の「おそれ」や「予測される」事態では武力行使はできないとのべました。

 しかし、志位氏から、法案は「武力攻撃のおそれ」や「予測される事態」でも「武力の行使」ができる構造になっており、それを禁止する規定があるかと問われると、首相も防衛庁長官も答弁できませんでした。

 法案が、自衛隊法で明記している「武力の行使」に際しての「国際法規と慣例の遵守」の規定を削除していることも重大です。

 これまで政府は、自衛隊法のこの規定が、国連憲章五一条の定める「武力攻撃にたいする自衛反撃」以外の「武力の行使」、つまり先制的な「武力の行使」をしない保障になると言明してきました。

 ところが有事法案では、武力行使の制約は「事態に応じ合理的に必要と判断される限度」というだけで、その前段にある「国際法規遵守」規定を外しました。日本が先制的な「武力の行使」をする歯止めを欠落させたのです。

 政府は、「武力攻撃事態」と米軍の戦争に自衛隊が参加する「周辺事態」が重なることを認めています。

 周辺事態法では、自衛隊は米軍を支援中に武力攻撃される危険が生じたら支援活動を中断して撤退するとして、「武力の行使」にならないしばりをかけていました。

 防衛庁長官は、有事法案でも、「おそれ」「予測」の段階では「地域を離脱する」といいますが、その一方で首相は「先制攻撃も必要になる」という米国防長官の見解も「理解できる」としています。これでは、いくら先制攻撃をしないといっても説得力がありません。

 日本は、米軍の先制攻撃に理解を示して、自衛隊にその戦争を支援させます。有事法案は、アジアで米軍が先制的に介入戦争を始めたら、日本が武力行使をもって参戦することに法文上なんらの歯止めもありません。

 周辺事態法は、自治体や民間にも協力を求めるだけで強制しないと政府が説明しましたが、これを「武力攻撃事態法」に読み替えただけで、国民も自治体も戦争に強制動員する仕組みになっているのです。

 有事法案では、国民の戦争協力を義務づけ、自衛隊が必要とする物資の保管命令に罰則をつけています。

 防衛庁長官は「国民が協力しないと国の防衛はできない」と権利制限を当然視しました。

 米軍の戦争に協力できないといって物資保管命令に従わない場合は犯罪人とされ、憲法が自由を保障する思想・信条を事実上罰することになることも明らかになりました。

 戦争を禁止した憲法九条のもとで、戦争に協力しない者が犯罪者にされるという事態が生まれることになります。

法案は廃案にすべき

 衆院特別委員会で審議が始まった初日から、先制的に武力行使する危険や国民の自由と権利を制限するという、重大な内容が明らかになりました。こんな法案は、廃案にするしかありません。

 


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