日本共産党

2002年5月4日(土)「しんぶん赤旗」

審議入りした戦争国家法案

本会議論戦から(3)

罰則で「良心の自由」侵害

非協力が「悪質な行為」に


違反者に懲役、罰金

 自衛隊法改悪案は、自衛隊が必要とする物資を取り扱う業者に保管命令を出すことができるとし、違反者を「六月以下の懲役、三十万円以下の罰金」に科すとしました。戦争非協力の国民を犯罪者扱いする規定です。

 小泉純一郎首相は四月二十六日の衆院本会議で「取り扱い物資の保管命令に対する違反等について、悪質な違反態様に限定するなど、必要最小限だ」とのべました。物資を隠したり壊したりといった「悪質な行為」に限り、罰するというわけです。

 しかし、法案に「悪質な行為に限る」とされているわけではありません。「悪質」かどうか判断するのは、国を挙げて戦争をすすめる政府です。違反の理由は問わないのですから、「自分の倉庫や物資を戦争のために使われたくない」「米国のための不正義の戦争に協力したくない」という「良心の自由」から抵抗したとしても、処罰対象にされてしまいます。

 憲法は「思想及び良心の自由」を「侵してはならない」と定めています。有事法案では、「戦争協力したくない」という「思想及び良心の自由」から出た行動も踏みにじられることになります。

労働者には業務命令

 法案は、国、自治体、指定公共機関が自衛隊と米軍の軍事作戦におこなう支援に、国民が「必要な協力をするよう努める」と定めています。

 これに対し、小泉純一郎首相は衆院本会議で、「戦争への協力を義務づけるという指摘はあたらない」とのべました。

 これは、有事法案の危険を国民の目から隠そうとするものです。なぜなら、戦争協力を「努力」義務とした以上、社会的な強制力が働くからです。その上、強制的な国民動員の仕組みを幾重にもつくろうとしています。

 一つは、自衛隊法による業務従事命令です。医療・土木建築・輸送関係の業者と労働者に、公用令書一枚で業務従事を強制することができます。

 自民党の質問者が「業務従事命令に罰則を設けていない点についてもさまざまな意見が出されている」(菱田嘉明衆院議員)とのべたように、与党内には罰則を科すべきとの意見もあります。武力攻撃事態法案は、自治体、指定公共機関の戦争協力を「責務」と定めました。

 法案には、指定公共機関として日本銀行、日本赤十字社、NHK、電力・ガス・通信の各事業者が明記されています。実際にどの事業者を指定するかは、国会にはかられず、政府が勝手に政令で広げることができます。

 「指定公共機関の従業員は業務命令で協力が強制されるのか」。日本共産党の石井郁子副委員長が衆院本会議でただしたとき、小泉首相は「従業員に対し、国から直接命令を発することは想定していない」と、はぐらかしました。しかし、国が従業員に直接命令を出さなくても、自治体、指定公共機関が戦争協力を拒否できない仕組みがつくられる以上、そこで働く労働者にとっては上司からの「業務命令」で協力が強いられることになります。

 (つづく)

 


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