日本共産党

2002年5月3日(金)「しんぶん赤旗」

審議入りした戦争国家法案

本会議論戦から(2)

戦争が「公共の福祉」か

「自由と権利」制限に歯止めなし


 「武力攻撃事態法案」は「武力攻撃事態への対処」のさいに、「日本国憲法の保障する国民の自由と権利」に「制限が加えられる場合」があることを明記しています。

 日本共産党の石井郁子副委員長は四月二十六日、衆院本会議の代表質問で、「どのような国民の権利を制限するというのか。国民の自由と権利を包括的に制限するなどということが、憲法のいかなる条項を根拠にしてできるというのか」と迫りました。

全体に網をかけて

 これに対して小泉純一郎首相は「こうした権利の制限は『公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする』との憲法一三条等の趣旨にそったものと理解される」と答弁。どの権利が制限されるかを明らかにせず、「公共の福祉」を口実に国民の権利を、全体に網をかけて制限しようとしています。

 憲法は一一条で「この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる」と明記しています。この規定からだけでも、憲法で保障された基本的人権を制限する「武力攻撃事態法案」が憲法違反であることは明白です。

 そもそも、侵略や人権抑圧につながる戦争が、「公共の福祉」とあいいれるはずがありません。

 憲法前文の「平和的生存権」は「戦争目的や軍事目的のために自由や人権を制限されないことを中核とする権利」(沖縄米軍用地強制使用裁判での沖縄県の第一準備書面)です。その憲法のもとでは、戦争協力が「公共性」を持つことはありえないのです。

 また、「公共の福祉」を持ち出せば、憲法に規定されたさまざまな国民の権利を一様に制限できるというものではありません。この点は政府も「基本的人権の個々の権利によって、これを制限し得る公共の福祉の概念はおのずから変わってまいらねばならない」(一九七五年五月、衆院法務委員会での吉国法制局長官の答弁)と認めています。

 憲法が「公共の福祉」に適合するよう制限する場合のあることをあらかじめ規定しているのは、二九条の「財産権」だけです。しかし、その趣旨は「財産権を公権力による故なき侵害から保障するにあり」(六一年十一月九日の東京地裁判決)とされ、国民の権利としての「財産権」を守るためのものです。

国際的にも批判の声

 「公共の福祉」を口実にした基本的人権の制限は、国際的にも批判されています。

 国連の国際人権B規約(市民的および政治的自由に関する国際条約)人権委員会は九八年十一月、「公共の福祉」という「あいまい、無限定で、(国際人権)規約のもとで許される制限を超える制限を可能にする」考え方にもとづく人権規制に懸念を表明する最終意見書を採択し、善処するよう日本政府に勧告しています。

 戦争協力のために、「公共の福祉」を口実にして国民の権利を制限することは、憲法上も国際法上も通用しない議論です。(つづく)

 


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