日本共産党

2002年4月26日(金)「しんぶん赤旗」

小泉政治1年

世論はこう見た


 小泉内閣が発足して二十六日で一年になります。発足当初、八割台だった支持率はいまでは四割台に半減しました。世論調査結果にしめされた「民意」から小泉政治一年の実像を探りました。

本気でない「自民壊す」

 「本気だ」22%、「そうは思わない」68%――。小泉首相の「自民党を壊す」の言葉を本気だと思うかとの問いにたいする回答です(「朝日」二十二日付)。

 小泉首相の高支持率を支えてきたのが、「自民党を壊す」のスローガンでした。そこには、族議員が政治をゆがめ、利権にまみれた古い自民党政治を変えてほしいという、国民の「期待」が込められていました。

 ところが…。一月、アフガン復興支援国際会議へのNGOの排除問題をめぐって、小泉首相は、NGOを出席させるという正当な決定をした田中真紀子外相を更迭。逆に、NGO排除に圧力をかけた鈴木宗男氏が衆院議運委員長を辞任すると、「潔い」とほめたたえたのです。

 これを機に支持率は軒なみ30ポイント近く急落。真相をあいまいにしたまま、幕引きをするという従来どおりのやり方に、国民の多くが「自民党を壊す」は「本気でない」と感じ取ったのです。

 その後、次々と明らかになる鈴木宗男議員、加藤紘一元幹事長の疑惑についても、小泉首相は「疑惑をかけられた本人が説明する責任がある」などと、人ごとのような対応をくりかえしました。一方、官房機密費問題は首相自身が「疑惑の当事者」でありながら、何の「説明責任」もはたそうとしていません。

 「国会議員の『政治とカネ』をめぐる問題」について、「小泉首相が適切に対処していると思うか」との質問では、「そうは思わない」が82%にのぼりました。(「読売」二十三日付)

 公共事業受注企業からの献金についても、いったん「規制」をいいだしたものの、それもいつのまにかトーンダウン。国民は「本気」の程度をすっかり見抜いています。

評価しない「構造改革」

 「構造改革を掲げてきた小泉首相の一年間を評価するか」

 評価する  34%

 評価しない 57%

 「毎日」(二十三日付)の世論調査結果です。

 内閣発足当時の「朝日」調査では、「構造改革なくして景気回復なし」という小泉首相の考え方に、「自分の考えをおし進めるべきだ」が57%を占めました。

 その後、小泉内閣がやってきたことは何か。

 「不良債権早期処理」の名のもとに、きびしい金融検査によって、内閣発足以来、五十二もの信金・信組が破たん。失業、倒産が増大しました。

 特殊法人「改革」として、住宅金融公庫、日本育英会など国民向け法人の廃止・民営化を打ち出す。

 医療「改革」では、サラリーマン本人などの三割負担をはじめ国民に医療負担増を押しつける法案を提出しました。

 小泉「改革」の地金が明らかになるにつれて国民の懸念、批判が強まりました。

 ▽「失業者が増えても不良債権処理に賛成か」賛成43%、反対46%(「朝日」昨年十二月二十六日付)

 ▽「構造改革をすすめてほしい」36%にたいし、「景気や雇用対策を優先してほしい」が57%(同一月二十九日付)。

 「小泉内閣の『構造改革』は、痛みを国民に『聖域なし』で押しつけ、ムダな公共事業などは聖域扱いにしている」

 こう指摘するのは建設政策研究所の辻村定次専務理事。「小泉首相は今年度予算で公共事業も削減したと宣伝します。しかし、それも建設コストが下落していることなどによるもので、従来型のまま。高速道路建設にしても、自民道路族と妥協して償還期限を三十年から現行のままの五十年にし、計画通りにすすめることにした。これは改革でもなんでもない」

突出したタカ派ぶり

 「小泉政権が誕生して一年近くなるわけだが、安保関係者にいわせると『この一年間の小泉政権で十年分やった』と評価されている」――自民党の山崎拓幹事長は、今月三日の講演でこう語りました。

 米国での同時多発テロ後、衆参でわずか九日間の審議で報復戦争参加法(テロ対策特別措置法)を強行したこと、そして戦後の歴代自民党政権が果たせなかった戦争国家法案(有事法案)の封印をといて国会に提出したこと…。小泉首相のタカ派ぶりは突出しています。

 小泉内閣は、この「十年分」の仕事を、密室協議とごまかしで推進してきました。

 有事法制については、首相自身も真剣な検討を行った形跡はなく、「政治の要諦(ようてい)は、備えあれば憂いなし。古今東西、変わらない」などと繰り返すだけ。アメリカの戦争に国民を強制動員するため、首相の戦争遂行の全権限を与えるという超憲法的な内容をごまかすのに必死。昨年の報復戦争参加法も、「法律的な一貫性、明確性を問われれば答弁に窮してしまう」といいながら、「常識」論で押し通しました。

 政治腐敗への対応でも、一枚看板の「構造改革」でも、すっかり正体を見せた小泉内閣。有事法制は「小泉にとっては、二の足を踏み続けてきた歴代内閣とは一味違うことを国民に示す好機となるかもしれない」(「朝日」十八日付)との指摘があるように、存在をアピールしたいという思惑があるのかもしれません。

 しかし、有事法制「反対」が20%(一月)から35%(四月)へ急増(「毎日」二十三日付)しているように、戦争国家づくりの批判は日増しに高まっています。


〈小泉語録カレンダー〉

2001年4月 小泉内閣発足

 「自民党をぶっ壊す」「政治を変える」

5月 所信表明演説

 「構造改革なくして景気回復なし」「恐れず、ひるまず、とらわれず」「いまの痛みに耐えてあすを良くしようという米百俵の精神こそ、必要」

6月 初の日米首脳会談

 「私自身、根っからの親米派だと思っている」「日本はもっと自立すべきだという人もいるが、そういうことはありえない」

7月 参院選

 「改革には痛みが伴うかもしれない。しかし、目標を持てば、痛みを痛みと思わない人もたくさんいる」

8月 靖国神社参拝強行

 「熟慮に熟慮を重ねた結果、今日がいいのではないか」「近隣友好をはかりたいという気持ちで参拝する」

9月 同時多発テロ

 「大統領の姿勢を支持している。自分は必要な援助と協力を惜しまない」「人ごとと思わず、米国とともにたたかっていく」

10月 憲法違反のテロ特措法強行

 「憲法そのものも国際常識にあわないところがある」「明確な、法律的な一貫性、明確性を問われれば、答弁に窮しちゃいますよ」

11月 医療改悪

「私がいっているのは三方一両損。痛みをともなうようなことは覚悟してほしい」

12月 青木建設破たん

 「構造改革が順調に進んでいることの現れだ」

2002年1月 田中外相更迭

 「涙は女性の最大の武器というからね」「(更迭は)事態が紛糾し、正常化のためにやむを得ない」

2月 ムネオ疑惑や加藤疑惑など噴出

 「みずからが疑惑にこたえるのであればいいと思う」「出処進退は本人が決めるものだ」

3月 支持率低下止まらず

 「政権は今が一番安定している。証拠は予算の年度内成立だ」

4月 有事3法案提出

 「有事法制には不退転の決意で臨む」

 


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