日本共産党

2002年4月19日(金)「しんぶん赤旗」

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バイアスロン

自衛隊以外にも門戸広げよ

代田幸弘


 2006年トリノ五輪にむけ、すでに日本の各冬季競技団体は始動している。クロスカントリーとライフル射撃を組み合わせたバイアスロンも、雪の残る北海道・ニセコで20日から強化合宿を始める予定だ。

 男女合わせて約20人の選手が参加。そのすべてが陸上自衛隊冬季戦技教育隊に所属する。先のソルトレークシティー五輪でも日本バイアスロン陣は選手・役員とも自衛隊チームでのぞんだ。結果は惨敗。男女の個人種目でいえば最高が20位台。リレーは女子が完走15チーム中、14位。男子も19チーム中13位に沈んだ。

 全体的に成績不振だった日本勢のなかでも、その低落ぶりは際立つ。代表チームの出口監督は、現地で「日本は世界に乗り遅れた感じがした」と落胆の表情をみせた。

 しかも、厳戒態勢下にあった五輪中に、宿舎で銃の取り扱いをめぐる不祥事さえ起こす。銃の扱いや管理に社会的な責任をもつ自衛隊員が「平和の祭典」で露呈した無自覚さは、国内外からきびしい批判をうけた。

 日本のバイアスロン競技は長年、自衛隊が中心になってきた。長野、リレハンメル、アルベールビルなど、この間の五輪代表選手も全員が自衛隊員だ。ふだんのトレーニングも、訓練基地を使って行っている。

 同競技に携わる一般人が少ない主な原因として日本では銃の規制がきびしいこと、練習環境のないことがある。近代五種・バイアスロン連合もその点は承知しているようで、ソルトレーク五輪後の総括では環境整備や選手確保の必要性を明記している。

 しかし、いつまでもトップ選手やコーチが特定の団体で占められるといういびつな現状に、関係者からも疑問の声があがっている。

 冬季競技に携わった元日本オリンピック委員会(JOC)理事の一人は「スポーツ団体として、もっと一般の人が参加できるような方法を考えるべきではないか。多くの国民が注目するオリンピックにも出ている。特殊な競技だからと済まさないで、門戸を広げることが必要だ」と話す。

 元全日本チームにいた距離コーチも「選手強化にしても、外の意見をうけつけない体質がある。自衛隊に入って練習環境が整っても、軍隊式の上からの一方的な指導では伸びない」と指摘した。

 今回の五輪では日本勢が低迷したことにたいして、選手団の派遣人数の多さも問題になった。先月のJOC理事会では、バイアスロンやスキー距離の成績を示して「五輪には(世界と)たたかえる選手を連れていくべきではないか」という異例の意見が出たほどだ。

 世界から大きく取り残され、しかも特定の団体が独占する閉鎖的な体質のままでは、日本のバイアスロンに未来はない。

 人間の多面的な才能をのばす複合競技は、いま世界で見直されている。もともとバイアスロンは北欧の猟師たちが銃を背負い、スキーを使って狩猟に駆け巡っていたものからスポーツとして発展してきた。スキー滑走の速さと射撃の正確さ。「動」と「静」の総合的な能力が試され、欧州、ロシアなどでは人気の高い冬季競技だ。

 日本も国際大会の競技歴は古く、五輪も1964年のインスブルック大会から参加している。その伝統の火を消さないためにも、思いきった改革を求めたい。(本紙スポーツ部記者)

 


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