日本共産党

2002年3月14日(木)「しんぶん赤旗」

若い世代が夢をなくす
最高益でもベアゼロとは

JC春闘回答 各職場怒り広がる


 自動車、電機、鉄鋼、造船などでつくる金属労協(IMF―JC)の集中回答がおこなわれた十三日、今年度連結経常利益が過去最高の一兆円を突破する見こみのトヨタ自動車がベースアップ(ベア)ゼロを回答するなど、軒なみベア・ゼロ回答になりました。各産業の労働者が怒りの声をあげています。

問われる大企業の責任

トヨタ自動車

 史上最高、日本企業としてはじめて連結経常利益が一兆円を超えたにもかかわらずベースアップゼロ、定期昇給分のみ六千五百円の回答だったトヨタ自動車。早番の労働者たちが午前十時四十分からの昼休みに、食堂でテレビニュースを見たといいます。日産自動車が七千円(ベア・千円)の報道に、「なんで日産なんかに負けるのか」、「こんなに一生懸命働いて、会社に協力してきたのに、どういうこっちゃ」「会社は全然誠意がないな」などの声が上がりました。

 ある職場の組合役員は、「『トヨタの一人勝ち』というけれど、会社の一人勝ちであって、労働者は負け組。会社の犠牲になっている感じだ。日本経済が元気がないだけに、トヨタが頑張ってほしかった」と話していました。

東  芝

 業績不振を理由に早々にベアゼロを打ち出した電機。最低四カ月分の一時金を確保したというものの、年々下がり続けています。

 「労働者の多くは不満や怒りはあっても、なかなかそれが口をついて出てきません」。東芝青梅事業所(東京)の五十代の男性労働者はそう話します。

 今、職場はリストラで退職する労働者が続出し、送別会が毎月のように開かれているといいます。業績悪化の宣伝が行き届き、春闘どころではないという雰囲気がつくられようとしています。

 二十代の労働者は「労働者犠牲のリストラを推進する経営者の責任を問いたい。経営者は少々給料が減っても暮らせるが、おれたちはこれ以上減らされたら生活ができなくなる」と怒りの声をあげました。

三菱電機

 兵庫県三菱電機伊丹製作所では、食堂で昼食をとっている最中、会社側の回答が放送され、労働者の間から「あーあー」とため息が流れました。

 二十代の青年労働者は「もうすぐ二人目が生まれるというのに、これじゃあローンの返済もめどが立たん」と怒ります。

 会社側が時間外・休日割増率を法定水準まで引き下げるなど二十四項目からなる賃金カット・労働条件見直しの逆提案にも批判が続出。「よりによって、春闘の要求もしないうちに出してくるとは何考えとんや。生活設計の見通しもない」と年配労働者。「長年、先輩たちが汗を流してかちとってきた労働条件を一気に引き下げるなんて、労働組合無視や。会社は労働協約を守れ」の声があがっています。

三菱重工

 三菱重工長崎造船所。会社側は、ベースアップなし、年間一時金百六十一万円(「合理化」協力金含む)、退職金増額要求拒否を回答しました。

 昼休みに情報を聞いた労働者は「せめてコイン一枚ぐらいは出ると思っていたが、ゼロとは…。意外やった」「一時金は下のモンに厚くしてもらわんば」など、今後の雇用不安や生活不安を抱えて言葉も少なでした。

 とくに「若い世代にとっては夢をなくしてしまう回答だ」と再検討を求める声が相次ぎました。

 職場にある全造船三菱重工支部長船分会は、ベアゼロ回答に抗議し、同日の定時後、ゼッケンをつけ横断幕を持って、会社周辺をねり歩く“春闘ウオーク”をよびかけるとともに、十四日午後から、半日ストライキに立ちあがります。


「これで日本経済はうまくいくのか」

JC幹部が会見

 金属労協(IMF―JC)の集中回答がでた十三日、鈴木勝利JC議長をはじめ主要単産の委員長・会長が会見しました。

 ベア千円を要求した自動車総連の加藤裕治会長は、史上最高益をあげるトヨタのゼロ回答に「間違っている」とし、経営側の「横並び意識がデフレスパイラルに日本経済を陥れている一つの要因」と批判。「労使関係の問題としても厳しくとらえていきたい」と発言。日産のベア満額回答には「今後に良い影響を与える」とのべました。

 ベアゼロとなった造船重機労連の吉井眞之委員長は「きわめて残念」とし、「産別を超えて何がなんでもベアはやらないといった経営陣の厚い壁を打ち破ることができなかった」と強調。ベア要求した産別が自動車と造船だけとなった今春闘について「きわめてむずかしい」と語りました。

 鉄鋼労連の荻野武士委員長は、雇用安定協定を締結できたことに「めざした趣旨は貫徹された」「ほっとしている」と表明。日経連の賃金抑制などの主張について「これで日本経済はうまくいくのか。どの国でも賃上げがまったくなくして国民生活が豊かになったとはきいたことがない」と訴えました。

 電機連合の鈴木委員長は、「上げ幅春闘は問題がある。(賃金)水準を考えなくてはならないのではないか」と、春闘のあり方を転換する必要を指摘。十八歳最低賃金の千円底上げ回答に、「均等処遇にむけての一歩を踏み出した」と評価しました。

 


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