日本共産党

2002年3月13日(水)「しんぶん赤旗」

「息子の死をムダにしない」

京セラ過労死 両親訴え勝利和解

安全配慮義務を明記

仙台高裁秋田支部


 息子の死は過労死として、秋田県大曲市の両親が京セラと香港の現地法人を相手取り損害賠償を求めた京セラ過労死訴訟の和解協議が十二日、仙台高裁秋田支部(矢崎正彦裁判長)であり、双方が裁判所の提案を受け入れ、和解が成立しました。

 訴えていたのは大森昌丸さん(69)と光子さん(64)。息子の光隆さん(当時二十九歳)が一九九六年十月七日、出張先の中国東莞市石龍鎮の工場で就労中に心筋梗塞(こうそく)で死亡したのは過労死で、京セラと現地法人は安全配慮義務に反していた、と主張しました。

 和解成立後の記者会見で、大森夫妻と弁護団は、「画期的な勝利和解」と強調しました。

 和解条項は、前文で光隆さんの死を「加重労働による極度の疲労のため」と両親が訴えたと明記し、(1)京セラらが和解金として既払金を除き五千万円の支払い義務を認め、両親に支払う(2)京セラらは、光隆さんの業務遂行中死亡を真摯(しんし)に受け止め…従業員の…安全配慮義務を尽くすよう努力する、など五項目を取り決めています。

 原告弁護団は、(1)五千万円の支払いは損害賠償責任を認めたものと同視できる(2)一審判決の不当性が明らかになった(3)国内在籍社員が海外子会社に出向し過労死した損害賠償請求訴訟で和解が成立した初めての事件(4)被控訴人らに安全配慮義務を尽くす努力を約束させた、などをあげ、「労働者の生命と健康を守るために画期的な意義がある」と強調しました。

 昌丸さんは、裁判を支え導いた多くの人びとに感謝し、「裁判が終わったが過労死はなくなっていない。けっして傍観者であってはならない。安心して生きられるよう願うのが人間の道。微力ながら(過労死を)なくすよう頑張っていきたい」と話しました。光子さんは、「息子の死をムダにしたくないと立ち上がった。(裁判が)京セラの労務改善につながっており、救われる思いをしている」と話しました。

 同訴訟の提訴は九七年八月。一審の秋田地裁判決(九九年八月)は訴えを棄却。両親が控訴していました。

 


もどる

機能しない場合は、ブラウザの「戻る」ボタンを利用してください。


著作権:日本共産党中央委員会 
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 Mail:info@jcp.or.jp